第435話死の間近
ななな、何してくれてるんだ!そ、そんなことしたら初音が・・・
「け、結婚?そそそ、そーくんが、私以外の・・・女、と・・・・」
「は、初音?さ、さっきから言ってるけどこれはゲーム─────ぐっぁ」
初音が割と冗談抜きで俺の首を両手で絞めている。・・・え、いや、え!?
「は、初音、離し────」
「大丈夫だよ、そーくん・・・そーくんが死んだらすることはしてから私も逝くから、そしたら来世では一緒になれるからね」
初音がそう言うと、更に首を絞める力が強まった。当然俺はそれを必死に剥がそうとしているが、全く初音は動じない。・・・本当にこのまま死ぬかもしれない。
苦しすぎて苦しくないと言うところまで来てしまった。
死ぬ直前ぐらいになると人間の脳が全ての感覚を遮断して、意識を失うようにできてるらしいけどそろそろ俺もその時期かもしれない。
「・・・あ、苦しそうな先輩に見惚れてる場合じゃないかも!」
「・・・あ、苦しそうなそーちゃんを眺めてる場合じゃないよね・・・!」
あゆと結愛はそう言うと、2人で初音の左右それぞれの手を俺の首から引き剥がして見せた。
「ごほっ、かはっ、はぁ、はぁ、うっ、はぁ・・・」
た、助かった・・・さっきまで苦しくなかったのに感覚が戻ったことで苦しさが・・・き、気持ち悪いし、苦しい。頭がぐらぐらする・・・な、なんでゲームでこんな思いをしなくちゃいけないんだ・・・
「離して!離し────」
初音はずっと結愛とあゆの2人がかりで抑えられていても抵抗をやめなかったが、いきなりぴたりと止まった。・・・なんだ?逆に不気味で怖い。
そして初音はゆっくりと俺の方に寄ってきて、俺と顔を向き合わせて謝罪をした。
「ごめんねそーくん、よく考えたらこれはゲームだもんね」
「はぁ、はぁ・・・」
当然俺はついさっきまで気管を締め上げられていたので道具もなしにそんな早く呼吸が安定するわけもない。
「でも、ね?そーくんが止まるマスがあまりにも浮気マスが多かったから・・・不安になって、もしかしたら現実でもそうなるんじゃないかって・・・」
それは俺も気になってるところだ。本当になんであんなにも恋愛関連のマスが多かったんだ?人生ゲームはもっとマンションを買うとか車を買うとかそういうのもあるはずなのに・・・
「でも、大丈夫だよね、そーくん」
初音はそう言うと、俺の頬に一瞬だけキスをした。・・・今はそれに反応する余裕がない。
少しの間初音が俺の背中をさすっていると、あゆがこんな声を上げた。
「あっ!せんぱ〜い、このすごろく『浮気シミュレーションすごろく』らしいですよ〜?」
「浮気シミュレーションすごろく・・・?」
なんだその俺にとっては最悪な────はっ。
「初音!!」
「あ、そういえば一年ぐらい前にそーくんの浮気対策のためにそんなの勝ったかも・・・じゃあそーくんが浮気したのはあのすごろくが悪かったんだね!制作会社ハッキングしてしっかり潰さないと!」
初音はそう言うと、張り切って自分の部屋の中に入っていった。
・・・今日は今までで本当に一番死にかけたな・・・
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