第431話修羅場
「そーくん!」
「そーちゃん!」
「先輩!」
「・・・はい」
初音とあゆは2人で一緒に料理を作ることなんてしたくないらしく、俺はご飯を初音とあゆ、つまり2人分の食事を食べさせられた。細身の俺にはかなりキツい。
・・・ご飯を作ってもらっておいて食べさせられたなんていう表現はよくないと分かってはいるけど、やっぱり胃もたれ寸前にまで追い込まれるとやっぱり感謝するだけという訳にはいかない。
そして今、俺は初音、結愛、あゆの3人から話しかけられていた。
「そーくん!一緒にいちゃいちゃしよ!」
「そーちゃん!一緒に映画見よ?」
「先輩!一緒に遊びましょう!」
なんだこのラノベの主人公みたいな感じは。これでこの3人が全員違うタイプで普通に好意を抱いてくれているんだったら俺だって何も言うことはない。もしそうなら喜びまくっていることだろう。
が、この3人は普通なんかじゃない。そのため、喜んでいたら隙を突かれていつ刺されるかわからない。
「え、えーっと・・・」
これは誰を選んでもバッドエンドしか見えない。
「ちょっと!私がそーちゃんと映画見るんだから、邪魔しないで!」
「は?識別回路壊れてるのに映画なんて見ても意味ないでしょ?」
「お二人とも大人気ないですよ〜、男の人には年下の様子を見る義務があります!」
「は?一つしか変わらないでしょ?」
「でも先輩達よりは私子供じゃないですかぁ〜」
「なら、子供にはそーくんと遊ぶのはまだ早いから消えてくれる?」
「酷いですよ〜」
「・・・・・・」
なるほど、これが修羅場か。ラノベの主人公とかを見ててそんな美少女達に言い寄られてて何が嫌なんだとか思ってたけど、これは美少女がどうとかっていう話じゃないな。
まず、俺には立ち入ることができない領域みたいだ。俺を巡って言い争っているはずなのに、俺には何も言うことができない。
それをラノベでは修羅場と言うんだろう・・・まさに今の俺だ。
だが!俺は諦めない!ここはラノベの世界じゃないんだ、俺の行動次第でどうとでもできる!
「だから!私とそーくんが────」
「ちょ、ちょっと俺トイレ行ってくるから、その・・・お、お好きにやっててください・・・」
俺はこの場から去ることを決め、車椅子をゆっくりと動かそうとするも、すぐに車椅子の取っての部分を掴まれてしまう。
「何言ってるの?そーくんがいないと意味ないでしょ?」
「そうだよ、そーちゃん」
「そうですよ〜、先輩♪」
「・・・すいません」
俺は身動きを取ることすらできないが、俺がいないと意味がないと言われてしまう。・・・これはもしかしたら修羅場以上の何かかもしれない。
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