第432話人生ゲーム
話し合いの末、一番可能性が薄いと思っていた全員で過ごすというものになった。全員と一緒に過ごすことで、互いが互いを監視し合って俺とも一緒にいられるから一応はそれで決まったらしい。
そして、少し時間が空いて、初音がこんなことを言い出した。
「ねえ、人生ゲームしよ?」
「人生ゲーム・・・?」
人生ゲームとは、プレイヤーが億万長者を目指し様々なライフイベントをすごろくという形で体験できるゲームだ。最後にお金を多く持っていた人が勝ちとなる。・・・たまにはボードゲームも悪くないかもな。
「あっ!私得意ですよ〜!」
あゆはどうやら人生ゲームが得意らしい。
「私はそーちゃんがやるならやるよ」
「じゃあ、決定ね」
初音がそう言うとすごろくのロードマップのようなものが敷かれ、色違いの若干人型の駒を4種類各々に渡した。
プレイヤーはみんな最初一万円持っている。
「じゃあ、まずはそーくんから」
そう言って、初音は真ん中のルーレットを指さした。このルーレットによって出る目を決める。どうやらこの人生ゲームは1〜9までの目があるらしい。
「・・・よしっ!」
俺はそのルーレットを回転させた。最初は勢いが強いが、その勢いもどんどん弱まっていく。そして─────
「そーくんは5だね」
「5か・・・」
5・・・良くも悪くもないような目だな。
俺は自分の駒を5マス進めた。
『彼女ができる 所持金の半額を失う』
「えぇ・・・」
良くも悪くもない目だと思ったけど、こうなると話は別だ。所持金を半分も失ってしまった・・・でもまあゲームはこれからだ。焦ることはな────
「そーくん、浮気?」
「え・・・」
焦らないといけない事態になってしまった。
「い、いやいやいや!ち、違う違う!げ、ゲーム!しかもアナログのボードゲームだから!浮気なんかじゃない!文字だけ!文字だけだって!」
「でも所持金の半分も他の女に使ってるよね?」
「だ、だからこれはさいころの目が────」
「言い訳するの?」
「言い訳っていうか・・・そ、そうだ!現に今俺の隣にいるのは初音だろ?」
「・・・そうだね」
「・・・・・・」
ほっ、一先ず初音は落ち着いたみたいで助かったけど・・・やばい、いち早くこのゲームを終わらせないといけない。
ここに出ている文字が割とリアルに俺の災厄に繋がってくる・・・
「じゃあ次は私だね」
そう言って初音はルーレットを回した。・・・9か。なんというか、運も持ってるのは流石の一言だな。
初音が止まったマスにはこう書いてある。
『アルバイト 10万円を入手』
「10万円・・・」
ゲームでもお金持ちか・・・羨ましい。俺なんて今所持金5000円なのに・・・
「次私するね」
結愛はそう言うと、軽くルーレットを回した。・・・6、俺と一マス違いだな。
結愛は6マス目まで自分の駒を進めた。
『自分のお金の半分を最初の手番のプレイヤーに貢ぐ』
「えっ・・・」
これは・・・俺としてはラッキーだな。俺の減った分の額がこれでちょうど埋まる。貢ぐっていう言い方はあれだけど、ありがたくもら────
「はいっ!そーちゃん!」
「・・・え?いや・・・なんで嬉しそうなんだ・・・?」
このゲームはお金を最終的に多く持っていたプレイヤーの勝ちだ。なのに嬉しそうなのはなんでだ?
「そーちゃんにお金あげられるなら本望だよっ!」
「そ、そうか・・・」
俺はなんというか逆に受け取りづらかったが、ルール上受け取らないわけにもいかないので大人しく結愛の所持金の半分、5000円を受け取ることにした。
「そーちゃんと一マス隣だね・・・❤︎」
「そ、そうだな・・・」
「じゃあ、次は私ですね〜」
なぜか惚気ている結愛を横目に、あゆもルーレットを回した。・・・7だ。
『恋人がいるプレイヤー1人を選択しそのプレイヤーを別れさせる、そして2000円を失う』
「じゃあ先輩で」
「・・・は!?」
「やった!」
あゆは即答し、初音は喜んでいる。・・・別にボードゲームだから別れさせられても何も思わないけどここまで周りの反応がリアルだと本当に悲しくなりそうだ。
・・・このゲーム、これから波乱の予感がする。
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