第430話あゆはバナナが気になる

 天銀は荷物だけ置いて学校に行くと言って割とまだ時間があるのに出て行った。つまり今ここは、初音、結愛、あゆ、そして俺というかなり地獄が想像されるメンバーだけなのである。

 そして今、初音と結愛は食事の時にどちらが俺の隣の席に座るかという言い合いをしていて、俺はあゆに玄関近くに呼び出されてそこに向かっていた。


「先輩`あれ`どういうことですか?」


「・・・あれ?」


 あれと言われても・・・まさかあゆもいつの間にか俺の部屋に入ってあの霧響が置いて行ったラノベを見たのか・・・?


「とぼけないでくださいよ〜、白雪先輩が言ってたじゃないですかぁ〜」


 初音が・・・言ってた?また何か変なことを言ったのか?


「バ・ナ・ナ♪」


「あっ・・・」


 そ、そういうことか・・・


「あれってそういうことですよね〜?」


 こ、ここはバナナっていうのが何かわかってないふりをしよう。


「な、なんのことだ・・・?バナナ・・・?」


 俺が迫真の演技でとぼけてみるも、あゆには全く意味がなかったらしく・・・


「あ〜、とぼけちゃうんですかぁ、なら今からでも白雪先輩が先輩のバナナを食べたと学校中に広めちゃいますよ〜?」


「ま、待て待て!」


「あれぇ〜?ただのバナナを食べられたっていう噂が広がるのの何が嫌なんですかぁ〜?」


「うっ・・・」


 こ、これは認めないとあゆが何をしでかすかわからないな・・・


「わ、わかった、ちゃんと説明する」


「はいっ♪」


 ・・・とは言ったものの、正直そのままの意味だとしか言いようがない。が、俺にだって反論の余地はある。いや、何に反論するのかはわからないけど。

 眠ってる間にそんなことをされたら誰だって抵抗なんてできるわけがない。俺は被害者だ。そこを強調してあゆに説明しよう。


「その───眠ってる間に────」


 俺はあゆに少し大雑把だけど説明した。


「なるほど〜、それがありなら今度から私もそういう感じでしたほうがいいですね〜♪」


「・・・え?」


 あゆはスキップでリビングに戻って行ったが、すれ違いざまのあゆの顔は決意を秘めた顔だった。・・・俺は何をされるんだ。

 ずっと玄関にいるわけにもいかないのでリビングに向かうと・・・


「だから!私がそーちゃんの隣だって!言語理解能力もないの!?」


「恋人の私が隣に決まってるでしょ!そっちこそ関係識別能力もないの!?」


「・・・・・・」


 まだ言い争ってるのか・・・


「じゃあ間を取って私が────」


 と、あゆは冗談のつもりで言ったんだろうがその発言によって2人の矛先があゆに代わり、しばらくの間リビングがかなり騒がしいことになった。

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