第402話媚薬の効果は的面

「・・・はっ」


 俺はすぐにあゆから離れた。な、何をやってるんだ俺は。


「ち、違うんだあゆ、今のは忘れ────」


「すごっ、本当にこんなに効果あるんだ〜・・・」


「えっ・・・」


 そう言ってあゆは何かを制服のスカートのポケットから出した。そこにはよくわからない成分の名前とかがいっぱい書いていて、ラベルに大きく書かれてい他のは『媚薬』という文字だった。


「・・・あゆ、まさか・・・!」


「はい♪ちょっと料理に盛っちゃいました♪」


「それのせいか!」


 媚薬のせいだと知って安堵した俺と最悪だと思ってる俺がいた。

 俺が素であゆに抱きついたんじゃないとしれてよかったけど、逆に言うとそれだけの効果がある媚薬を俺は今盛られている状態ということだ。


「で、でも、あゆにはなんで効果がないんだ・・・?」


 料理に盛ったなら、同じ料理を食べたあゆにも影響が出てないとおかしい。


「お皿に分けた後で盛りましたから」


 なるほど、それでか・・・って!


「何してくれてるんだ!」


「いや〜、ちょっとおふざけのつもりたんですけど・・・こんなに効果あるなら本番に取っておいてもよかったですね・・・先輩から抱きついてもらえるなんて・・・ああ、あゆ死んじゃいそ・・・」


 と、あゆが両手で顔を覆った。今の感じを見てると、年上とかに対してじゃなかったらあゆは自分呼びなのかもしれないな。もしくはテンションが上がった時だけとか・・・?別に今は関係ないけど。


「と、とにかく、今はまずい、本当に何をされても性的な目で見てしまう、だからちょっと俺とは距離を取ってくれ」


「え〜?なんですかそれ〜?そんなこと言われて私が引くわけないじゃないですか〜、むしろもっとアタックしちゃいますよ〜?」


 くっ、確かにあゆの性格上そうきてもおかしくないか・・・ならここはちょっと演技を混ぜてでもきつく言おう。


「今そんなことされたらあゆを虐めすぎて壊してしまうかもしれないから俺から離れてくれ」


「・・・・・・」


 ちょっと酷いかもしれないけど、ここまで言えばあゆだって────


「はあ、はあっ・・・な、なんですかそれぇ〜、ちょ、超かっこいいじゃないですかぁ〜!せ、先輩がそんなこと言ってくれるなんて・・・やっぱり最高ですね!いいですよ!壊してください!」


「ちょ、ちょっと待て、お、落ち着け・・・」


 なんで媚薬を盛られた俺よりあゆの方が興奮してるんだ。


「もぅ〜、そんなこと言って先輩だって我慢してるくせに〜」


「我慢しないとこっちは本当にどうにかなっちゃいそうだから我慢してるんだ!誰のせいだと思ってる!」


「じゃあもうそんな我慢やめちゃいましょ?ね?」


 そう言ってあゆは俺の耳元から首元にかけて左手でなぞった。


「っ・・・」


「ねぇ〜、せぇんぱ〜い❤︎」


「・・・・・・」


 まずい、この展開は非常にまずい。まずいけどこのままいくと体が言うことを聞いてくれそうにない・・・こうなったら這ってでも逃げよう。

 そう思い、俺は思い切って這って洗面所まで向かわせてもらうことにした。体さえ冷たくなれば多少は冷静になるはずだ。


「えっ、ちょちょちょちょちょ〜っと待ってください!」


 そう言ってあゆは俺の両足を止めて俺の前にしゃがみ込んだ。


「な、なんだ・・・」


「あんなに私に大見え切ったんですから責任とってくださいよ〜」


「そ、そんなこと言われても・・・」


「先っちょだけでいいですから〜!」


「なんのだよ!」


「えっ、決まってるじゃないですかぁ〜、先輩のお────」


「い、いや!言わなくていい!」


 今本当に直接的に危ない単語を言おうとしてたな・・・それにしても本当にこれは暑すぎる・・・そうだ。


「あ、あゆ、この続きは俺がお風呂に入らせてもらってからでもいいか?もちろん俺が先に入るのが嫌ならあゆが先に入ってもいい」


「わかりました、先に入ってもいいですよ〜」


 と、意外にもあっさりと承諾してくれた。引くべきところはちゃんとわかってくれてるみたいだ。

 俺はそんなことを思いつつ、着替えを────ん?


「待てよ・・・」


「どうしましたぁ〜?」


「俺着替え持ってない!」


 しまったぁ・・・せめて学校用のジャージでも持ってこればよかったぁ・・・意外と学校用のジャージは動きやすかったりもする。


「あ、それならありますから大丈夫ですよ〜?」


「ああ、そうか、それはよかっ───って、なんであるんだ?」


 あゆは俺の鞄は取ってくれてたけど着替えは持ってなかったはずだ。・・・取ってくれてたって、ちょっとおかしい気もするけどまあいいか。


「先輩と同じサイズの服で先輩に抱いてもらうのを想像してるからです、もちろんあっちの家よりは少ないですが、この別宅にもちゃんと用意はあります」


「・・・・・・」


 俺は聞かない方が良かったと思いつつ、あゆからそれらの服を受け取った。・・・しっかりと下着まで用意されてるあたり感謝を通り越して逆に怖いまである。まあ、ありがたくお風呂から上がったら着用させてもらおう。

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