第396話天銀の期待
屋上から教室に戻ると、今度は月愛じゃなくて天銀が俺の席までやってきた。
「最王子くん、怪我は大丈夫ですか?」
「え?あー、大丈夫だ」
なんていうか最近はもう怪我の心配なんてされなくなって、むしろ初音とかあゆはそれを好都合だと捉えてきてる節があるから怖い。
「そうですか、よかったです・・・ところで、噂で小耳にしただけなのですが・・・」
天銀は気まずそうに言う。・・・その話題が何かは俺にも理解できた。
「ふ、二股をしているというのは本当なんですか?」
「・・・・・・」
この問題はみんなが思っているよりものすごくややこしい問題になっている。まず第三者視点では、俺が公認で二股をしているように映り、俺視点ではとりあえず学校の中だけではあゆと恋人のフリをすることを決め、あゆ視点ではそもそも俺と初音は恋人じゃないため本心では浮気だとすら思っていない、そして今はまだこの事態を知らない初音がこのことを知ったらと思うと・・・本当に現状整理するだけでとんでもない状況になっていることがよくわかる。
「べ、別に二股しているからといってどうとかではないのですが・・・それなら、その・・・三股もするんですか?」
「は!?するわけないだろ!」
そこだけは否定しておこう。
「で、ですよね・・・でも犯罪者心理では一度殺人をしてしまえば二度目は一度目よりも軽い気持ちで起こすことができると言うので、ちょっと期待・・・あ、いえ、なんでもないです・・・」
なんで犯罪者扱いされないといけないんだ!別に犯罪者になった覚えはない!
程なくして月愛が俺が戻ってきたことに気づいたのか、俺の席の前まで来た。天銀と横に並ぶ形だ。
「さっきは気にしないと言ったけれど、詳しく聞かせてもらうことにしたわ」
「・・・え、何が?」
俺はわかっていたが時間稼ぎのために聞き返してみた。ひりやすみ終了のチャイムさえなってくれれば誤魔化せるからだ。月愛は言わなくてもわかるでしょう、と諭してきた。
「あなたが二股するクズだったということよ」
「いやだからあれには止むに止まれぬ事情が────」
「どんな理由でも二股するなんてクズでしょう?隠してないから良い、とはならないと思うけれど?」
「そ、それは・・・その・・・」
「あなたもしかして恋愛に関しては頭おかしいんじゃないのかしら」
「・・・・・・ぁ」
とうとう言われてしまった!いつかは普通とズレていると他人に指摘されるとは思ってたけどとうとう俺の知り合いで唯一と言ってもいい常識人の月愛にそれを言われてしまった・・・!俺だって好きで二股なんてしてるわけじゃ・・・ぁ。
こうなったら思い切って月愛に相談してみよう。
「も、もし俺が月愛だったら月愛はどうするんだ?」
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