第395話あゆとの昼食
「せぇんぱ〜いっ!お昼ご飯一緒に食べましょ〜❤︎」
あゆが教室の外からひょこっと顔を出していった。周りから黄色い声援が飛んでくる。俺の席は廊下側の一番後ろなためあゆの顔はすぐそこだ。
「ひゅーひゅー熱いねー」
「・・・・・・」
ここまで周りから応援される恋愛があるだろうか。もっと嫉妬とか憎悪とかがあるかと思ったが、よっぽどあの時の雰囲気とかあゆの言葉が効いてるらしいな。
俺はあゆの方に自力で車椅子を押すと、そこからはあゆが俺の車椅子を押して屋上に向かった。
屋上には何人か人がいたが、俺たちが来たと見ると、みんな空気を読んでかどこかに行ってしまった。・・・なんなんだこれは。
「じゃあ、先輩、あそこで食べましょ〜」
そう言って、あゆはできるだけ見晴らしのいいところに俺の車椅子を押しながら移動し、俺をゆっくりと車椅子から下ろし屋上の床に座らせた。下にはあゆの敷いたシートがある。
「じゃあ先輩、もちろん先輩の分も作ってるので!」
そう言ってあゆは俺にお弁当を手渡してくれた。
「あ、ありがとう」
朝怒らせてしまったからお弁当なんて作ってきてくれてたのは正直意外だった。しばらく黙々と食べていると、あゆが自分のお弁当からタコさんウィンナーを取り出し、俺の口に入れようとした。
「あ〜ん❤︎」
特に断る理由もないので、俺はそのまま口に入れた。・・・これは紛れもなく初音に言わせれば浮気に該当するだろう。だが、俺としては学校の外ではあゆと恋人でいるつもりはない。あくまでも学校の中で、もうそういう空気もできているからそれを受け入れることにする。あゆの言っていることにも一理はあると思ってるし・・・
「おいしいですかぁ〜?」
「ああ、おいしい」
「ありがとうございま〜す!これもどうぞ!」
そう言ってあゆは椎茸を渡してきた。
「うっ・・・」
俺は椎茸とかキノコとかは苦手だ・・・どうしよう。俺はここで初音とのトラウマを思い出す。
『今日はちょっとそーくんが浮気しないか試したくて・・・』
『う、浮気なんてしない』
『うん、わかってるけど・・・そーくん椎茸嫌いだったよね?』
『あ、ああ、嫌いだ』
『はい、これ私が愛情をこめて作った椎茸』
『えっ・・・』
『私のこと好きなら、食べられるよね?私ならそーくんがくれたものなら虫だって食べられるよ?』
『・・・も、もちろん・・・』
俺はその後、息を止めてその椎茸を食べた。
・・・っていうことを思い出した。こ、これは・・・どうしよう。やっぱり嫌いでも一応学校の中だけでも恋人になると決めたなら食べるべきか・・・?
「あ、もしかして・・・椎茸嫌いでした?」
「え?いや、まあ・・・」
「ならこれはいらないですね」
そう言ってあゆは小さい袋にその椎茸を捨てた。
「い、いいのか?」
「嫌なものを無理やり食べる必要なんてないですよ〜」
あゆは普通のことのようにそう答えた。・・・そうか、そうだよな。
「あっ!そうだせんぱ〜い、これ見てくださいよ〜!」
そう言ってあゆは表紙が女性の裸体で男性が───って!
「なんで学校にエロ本なんて持ってきてるんだ!」
「え〜、こういうのワクワクしませんか〜?」
「しない!」
そんな感じで俺たちは昼食を終えた。
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