第389話総明の筋力
あゆからそんな言葉を聞いて俺は・・・
「それはそうだろ!」
と返した。逆にこんなに色々なことをされて怯えない方が狂ってる。って言うかすでに俺はもう狂い始めてる。高校に入学する前ならいきなり監禁なんてされたらもっと取り乱してるはずなのに今俺は全然動揺してない。
ちょっとは動揺してるんだろうけど、それでも道端の人をいきなり監禁した時の反応よりは絶対に落ち着いている。
「そう言う意味じゃなくて、なんて言うか・・・女の子とのえっちを避けてるみたいです」
「・・・・・・」
ひ、否定できない!と言うより実際にそうしている。でもそれは怯えてるからとかじゃなくて俺の考えはせめて20歳になってからそう言うことをしたいと思ってるからだ。
「それは俺の考え方が成人してからの方がいいと言う考えだからだ」
ここははっきりと言っておこう。と思ったが、あゆには伝わらなかったらしい。
「成人してからって・・・この前彼女でもない後輩の私とあんなに濃厚なキスしたじゃないですかぁ〜」
「あれは無理やり────」
「高校一年生の女の子が無理やり迫って来たところで、高校二年生の男の子ならその気になれば引き剥がせたはずですよ〜?」
「それができたら苦労してない!」
俺は一際大きな声で言った。何が高校一年生の女の子だ、力は全然女の子、なんて可愛い表現で片付けられるものじゃない。
「それは先輩が実は望んでるからなんじゃないですかぁ〜?だって私あの時はいつやり返されてもいいように力抜いてましたし・・・むしろそうなってくれれば先輩から私を求めてくれて〜、みたいなのを期待してたんですけど〜」
「嘘つけ!あんなに力込めといて何が力抜いてただ!」
「・・・え?」
「・・・え?」
俺とあゆは交互に「・・・え?」と言う疑問の声を漏らした。・・・何が「・・・え?」なんだ?
「・・・先輩、ちょっと試しに私の左腕全力で握ってもらってもいいですかぁ〜?全力でいいので」
あゆはそう言うと、服の左袖を捲り、細く白い左腕を見せた。そしてタイミングよく俺の右手の拘束が解かれた。
「は、は?なんだいきなり」
「いいですから〜、あ、本当に全力でお願いしますよ?」
多分俺の利き腕だってわかった上で俺の右手の拘束を解除したんだろうけど・・・仕方ない、ここら辺で俺の全力をあゆにわからせ、俺を先輩として讃えさせる計画でも始めよう。
俺は足以外の全身の力を右手に集中させた。足は怪我をしているため踏ん張ったりすると怪我が悪化するかもしれないため力は込められなかったが、後輩の女子を驚かせるのにそんな力は要らない。
「ふっ・・・!」
俺は全力であゆの左腕を握った。
「・・・・・・」
あゆが驚いたような表情をしている。これが男である先輩である俺を舐めた罰だ!どうせならちょっと大人気ないけど日頃の恨みも込めてもっと強く込めよう。
「ふっぁ・・・!」
俺は最後に一度強く握ると、その手を離した。
「ど、どうだ、あゆ、これが、俺の、力だ・・・」
「・・・じょ、冗談ですよね?せ、先輩」
どうやら俺の力が強すぎて声も出ないらしい。確かに俺の見た目はちょっと細身かもしれないけど、だからって流石に一つ年下の女子に負けるような男をしてはいない。
「冗談じゃない、これが現実だ、あゆ」
俺がそうかっこいい感じで言うと、あゆは言った。
「先輩・・・力無さすぎですよ」
「・・・え?」
俺は一瞬あゆが何を言ってるのかわからなかった、本当に何を言ってるんだあゆは、今のは空気の流れ的に「せ、先輩・・・!ヘタレとか言ってごめんなさい!」みたいな感じになるんじゃないのか・・・?
そ、そうか・・・!
「あゆ、見栄なんて張らなくていいんだ、そもそも年齢も違えば、性別だって男女で違うんだ、筋力だけで言えば女子が男子に勝つのは難しいこともある」
俺はあゆを慰めるように言った。きっとあゆも俺より筋力がないことを悟ってしまい、負けず嫌いなところが出てしまってるんだろう。こうしてみると後輩というのも可愛い。
「・・・いや、茶化してるとかじゃなくて本当に・・・」
「・・・え」
なんかあゆの顔がガチな感じというか、本当に嘘をついていないと人間の本能的に察知できるぐらいガチな感じが伝わってきた。・・・え?
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