第382話あゆによる救済

 俺は聖徳太子じゃないんだ、10人どころか2人、特にこの2人の対応を同時にすることなんてできるわけがない。しかも2人ともかなり疑念と警戒心を持ってるみたいだし・・・と、とにかく1人ずつ話そう。


「ゆ、結愛、ちょっと待ってくれ、先に初音に説明する」


「え?なんで虫が優先なの?」


「・・・じゃ、じゃあ初音、ちょっと結愛に先に色々と説明するからちょっと待っててくれ」


「え?なんで彼女の私が後回しでこんな奴が先なの?」


「・・・・・・」


 じゃあどうすればいいんだ!これが本当に詰みって奴なのか?どちらの選択をしても俺の魂が削られてしまう。


「ちょ、ちょっと俺トイレに────」


「「ならここで出して」」


 なんでそこだけハモるんだよ!ど、どうしよう・・・そ、そうだ!さっきからずっと後ろからあゆがちょっとだけ頭を出している。あゆに助けを求め───って、だめだだめだ。

 元々俺がこんなに追い込まれてるのはあゆのせいなんだ、そんなあゆを巻き込んだらさらに難しいことになる。

 ・・・まあ、よくよく考えたらなんであの時簡単に結愛と一緒にお風呂に入ってたのかとか今思い返せばかなりおかしかったとは思うけど・・・それも元はと言えばあゆが変な作戦を実行しなければ起きなかったことだ。


「ねえ、邪魔なんだけど」


 ここで初音が結愛に対してそんなことを言う。


「は?邪魔はそっちでしょ?虫って人間からしたら邪魔なの」


 結愛もその言葉に対抗した。・・・そこで大人しく引いてくれたらなぁ・・・


「やっぱり人物識別回路壊れてるじゃない?」


「は?正常なんだけど、っていうか概念的な意味で話してるんだけど、それも認識できないそっちの方が頭おかしいんじゃないの?」


「概念的かどうかなんて言わないとわかんないし、それを伝えてあげないとわからないことが回路壊れてるんじゃないのって言ってるの」


 こ、こういう時俺はどうすればいいのか誰も答えをくれないのが本当に困る。


「まぁまぁ、相手にどう思われてようとそれは相手に問題があるんですから、気にすることじゃないですよ」


「え・・・!?」


 まさかのあゆがここで救済の意図をたらしてくれた。


「・・・そうだね、相手がウイルスじゃ理解できるわけないよね」


「・・・確かに、相手が虫だったら理解できないよね」


 こうしてひとまずいい方向なのかはわからないけど、あゆがまとめ上げてくれた。・・・本当にあゆが何をしたいのかわからない。混乱させたと思ったら俺を助けたり・・・もしかして初音と結愛の関係をとりあえず落ち着かせようとしたのか?だとしたら優しいけど・・・あゆの考えてることなんてわからないな。

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