第381話入ってきた初音

「・・・・・・」


「で、あ、あゆから何を聞いたんだ・・・?」


 俺は気まずいながらも聞いた。正直思い当たる節があるどころじゃない。昨日はすることすることが一つでも初音に話したら本当に致死レベルの話しかない。


「うん、まずね?絶対にあの女の嘘だと思うんだけど、あいつとお風呂に入ったってほんと?」


「えーっと・・・お、お風呂に入ったっていうか一緒に脱衣所に入って脱衣所の掃除をしてただけだ」


 脱衣所に監視カメラはなかった。俺たちが一緒に脱衣所に入ったところまでは監視カメラで見れても、脱衣所で何をしてたかまでは見れない。


「ふ〜ん?何その無理な言い訳」


「い、いや、本当・・・だ、な、なんなら脱衣所を見てくれても構わない」


 そもそもこの家の脱衣所は元々物凄く綺麗で、初音が常に掃除してくれているため基本的に変わり映えしない。良い意味で。


「・・・本当にあいつとは一緒にお風呂に入ってないの?嘘だったらわかってるよね?」


 これを聞いてくるってことは、確かめる術はやっぱりないってことだ。なら堂々と嘘をつこう。


「もちろん本当───」


「そーちゃん、そういえば昨日のお風呂の時のことなんだけど───え?」


 洗面所から帰ってきたのか、結愛が俺に話しかけてきて、初音がいることに一瞬驚いたようだった。


「え、なんで虫が侵入してるの?」


「そーくん、今のどういうこと?昨日のお風呂って何?」


「あ、あーっと、そ、そう!脱衣所だけじゃなくてお風呂掃除もしたんだ!」


 頼む!結愛!俺に合わせてくれ!


「え?何言ってるの?そーちゃん、昨日あんなに体密着させて体洗いっこしたりそーちゃんの子種の動きだって私感じたよ?」


「・・・そーくん?」


「・・・・・・」


 詰んだ、終わった。人生が詰んだ。俺は今本当の意味で詰みを感じている。将棋みたいに投了はできない。投了したいなら死ぬしかないというのが現実だ・・・


「そっか、そーくんまた私に嘘ついてたんだね」


「・・・・・・」


「でも、許してあげる」


「・・・え?」


 ここで初音から嬉しい言葉が出る。


「だって悪いのは患者の方じゃなくてウイルスの方でしょ?だったらそのウイルスの方を駆除しないと」


「ウ、ウイルス・・・」


 結愛のことか・・・?結愛は初音のことを虫って呼んで初音はとうとうウイルスとか言い出した・・・お互い人間ってことを忘れない方がいいと思う。


「でもね?そーくん、まだまだ私に隠してることあるよね?」


「・・・・・・」


 本当に1日だけで起きた出来事なのかと疑いたくなるぐらい、昨日は色々なことが起きた。・・・起きてしまった。


「ねえそーちゃん、なんで虫がいるの?」


「・・・・・・」


 これは・・・どうすればいいんだ。

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