第368話真性のサディスト

「な、なんだ・・・?それ・・・」


 もちろん俺が寝ている時にちょっとだけ漏らしてしまった、なんて恥ずかしい話ではない。だとするなら・・・


「仕方ないじゃないですか〜!好きな異性の先輩とと2人きりの空間なんですよ?しかもノーパンっていうリスクありで!愛の液が出てしまっても仕方ないですよ〜!」


「あ、愛の液って・・・」


 な、なんかそれって確か・・・女性が興奮した時の───って!


「ぬ、濡れてるってことは、本当にその・・・し、下着を履いてないのか・・・?」


「だからそう言ってるじゃないですか〜」


 えっ、いや・・・え?あゆは何をしてるんだ?普通に謎だ。こんなのそこらへんの不審者と変わらない。


「・・・下の口がお腹空いちゃったみたいなので先輩のこと食べちゃってもいいですか?」


「・・・・・・」


「・・・あれ?先輩?どうしたんですかぁ〜?」


「・・・・・・」


 ・・・・・・こんなの放心状態になるしか平静を保っていられない。百歩譲って彼女である初音がそういうことをするならわかる。

 ・・・いや、わからないけど初音なら俺はこんな放心状態にならなくても声をあげてどうにかそれを阻止しようとする。でも仮にも後輩の女子が2人きりの空間で下着を履いていないというのは思っているよりも精神的にくるものがある。


「せぇ〜んぱ〜い」


「・・・・・・」


「構ってくださいよ〜」


「・・・・・・」


「・・・削ぎ落としますよ?」


 何を?何をだ?何をなんだ?


「はっ!今放心してるふりしてるから脱がせてっていうフリですか!?」


「フリじゃない!」


 思わずツッコミを入れてしまった。本当にあゆといると調子が狂う。


「・・・そうだ、借り、返してください」


「か、借り・・・?」


 申し訳ないけどあゆには貸しはないにしても借りなんて絶対にない。


「前私の裸、半分見ましたよね?」


「いや、あれは見たっていうか見せられたって感じだろ・・・」


 あゆが俺をはめるために俺の部屋を荒らした時のことだ。っていうかそれでいうなら俺が貸してるぐらいだ。


「先輩も体の上半身か下半身のどちらかの裸を見せてください」


「は!?」


 何を言ってるんだあゆは。


「私としては下半身が良いですけど、先輩ヘタレだし、上半身で満足してあげますよ」


「なんっでまだ何も言ってないのにヘタレとか言われないといけないんだ!」


 初音にも前言われたな・・・ヘタレだとかひょろちょろだとか・・・俺の評価が酷すぎるような気がする。


「じゃあ見せてくれるんですかぁ〜?」


「・・・そ、それとこれとは話が別だ!」


「は〜あ?これだからヘタレは・・・あっ、すいません、なんでもないです」


 この後輩はちょっと俺のことを舐めすぎだと思う。別に先輩を敬えとかそういう古い考えを持ってるわけじゃないけどだからと言ってこの弄ばれてる感じはどうかとも思っている。ここは先輩としてガツンと言おう。


「あゆ!」


「うあっ、なんですかぁ〜?いきなり大声出して、そんなに下の名前を大声で呼ばれると・・・私のこと求めてます?」


「そうじゃない!そろそろ年上としてあゆに────」


`ピンッ`


「〜〜〜!!」


 俺は声にならない声を出して、俺は車椅子のまま顔を膝に当ててダンゴムシのように丸くなる。理由としては体の下半身に激痛を感じたからだ。・・・いや、激痛なんてものじゃない。痛みとかそういう次元を遥かに超えてる。下手したら足が折れた時より痛いかもしれない。


「あっ、ごめんなさ〜い♪年上としてとか先輩のくせに生意気なことを言おうとしてたのでつい・・・テヘッ」


「ぁ、ぁにを・・・」


「ちゃんと喋れてないですよ?そんなに痛いんですかぁ〜?」


 だから痛いなんてレベルじゃない。本当に俺は何をされたんだ。


「男性の子種を溜めてるところあるじゃないですかぁ〜?」


「ぇっ・・・」


 ま、まさか・・・


「そこをちょっと軽くデコピンしちゃいました❤︎」


「ぁっ・・・!」


 俺は現実を知ると同時に絶望と後輩の女子に対して殺意を覚えた。軽くなんて言っても俺からしたら死んでしまった方がマシというぐらい痛い。これは多分15分ぐらいは悶え苦しむやつだ。感覚的にわかる。


「そんなに悶えるものなんですね〜、初めてやったので驚きました♪護身術、なんて言いますけど本当に効果あるのかなぁって思ってたので、試せてよかったです❤︎」


「・・・ぁぁ」


「そんな声出さないでくださいよ❤︎興奮しちゃいますよ?」


 もしここに鉄球があったら俺は投げてしまってるかもしれない。


「うわぁ・・・苦悶の表情ってやつですかぁ〜?それにしても・・・服越しだけど触っちゃいました❤︎」


 何が触っちゃいましただ、それが俺にそっとボディタッチしちゃったとかなら可愛げもあったけど今の俺には怒りしかない。

 それから5分ぐらい経って、ようやく痛みがちょっとずつマシになってきた。


「あ、あゆ・・・」


「あ、やっと喋れるようになりました?ごめんなさ〜い、そんなに痛いなんて思わなくて・・・だって本当に軽くだったんですよ?軽く、弾くように」


 弾くようにされるのが一番痛い。


「でも本当にいいことを知りました❤︎最悪の場合先輩のそこを徹底的に攻撃したら簡単に抵抗しなくなるってことですもんね♪」


「・・・ぃ」


「あっ!顔から血の気が引きましたね!まあ、か弱い女の子として生まれてきたので突けるところはこれからも突いていきますね♪」


 だ、だめだ、とにかくこの状況を打開しないと・・・あゆは本当にやばい。俺に好意を持ってるのか知らないけど好意を持ってる相手が苦しんでるのを見て楽しむタイプだ。初音とか結愛とかもそういう時はあるけど、それは俺が浮気をしたと誤解して、俺に後悔させるためだ。でも、あゆは素の状態で俺が苦しむのを楽しんでる・・・真性のサディストだ・・・

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