第346話見覚えのないエロ本

「・・・そーくん」


「ん?なんだ?」


 初音は怒気を放ったような声で俺に話しかけてきた。申し訳ないけどそんな怒られるようなことをした覚えは全くない。


「そーくんの部屋のベッドの下の隅にこんなの置いてたんだけど」


 そう言って初音は俺に『年下小悪魔との一夜』と書かれた明らかに・・・いわゆるエロ本というものを手に取って出した。


「な、なんだそれ、俺のじゃない、っていうかそんなの知らない」


「でもそーくんの部屋に置いてあったんだよ?」


 そんなこと言われても俺がこんなものを買うわけがないし、そもそも初音の監視下でこんなものを買うなんて不可能だ。


「初音の監視下でそんなの買えるわけないだろ?」


「買ったんじゃなくても誰かに貰ったんじゃないの?例えばあの後輩の生意気な女とか」


 あゆ・・・?


「い、いや、俺はそんなの貰ってな───」


 ん?待てよ?あゆは確か俺のことを嵌めるために俺の部屋に先に入ってたな。まさかその時に・・・まだ罠は残してたのか!


「待て待て!わかった、それはあゆの罠だ!」


「・・・その証拠は?」


「きっと監視カメラの映像にあゆが俺のベッドの下に入ってる映像があるはずだ、それさえ確認できれば────」


「その映像があったとしても、そーくんがあいつにそう指示したってだけじゃないの?」


「うっ・・・」


 確かにそう見えなくもない・・・しかもこればっかりは監視カメラですらも証明できないし盗聴器でも確認はできない。


「まあこの本の女が胸の大きさが私ぐらいっていうのは及第点だけど」


 そこは俺としてはあんまり問題じゃないけど・・・確かあゆも初音と同じぐらいの胸の大きさだった気がするけどそれが関係してるのか・・・?って!どうでもいい!


「私がなんでこんなに怒ってるかわかる?」


「そ、それは、初音に隠れてそんな本を読んでたって初音が思ってるからだろ?でも実際には俺は本当にそんな本の存在は────」


「私が怒ってるのはその理由もあるけど、なんで私に直接こういうことをして欲しいって言ってくれないのかってことだよ」


「・・・は?」


 何を言ってるんだ初音は。


「この本ちょっとパラパラめくってみたら女のことを縛って───してたり逆に自分が縛られて───してたりするよね?」


「だから俺は読んでないからそんなこと知らな────」


「こんなこと妄想するぐらいなら私に言ってよ!妄想じゃなくて現実にしてあげるから!」


 だめだ、俺が何を言っても聞いてくれそうにない。こうなったら・・・


「初音、一緒にあゆを問いただそう!本当に俺はそんなの知らないんだ!」


「・・・ほんとに?」


「本当だ!」


「じゃあもしそれが嘘だったら初めての時は私の好きなやり方でしてもいい?」


「・・・い、いい・・・」


「・・・はあ、本当はあんな女となんて会いたくないけど、まあそーくんと好きなやり方で子供を作るためだし・・・仕方ないかな」


 嘘じゃないからこそ受けられたけど、そのためには嘘じゃないことを証明しなくてはいけない。初音の言ってることは無視するとして、俺はあゆに受け取ったメモ用紙に書かれていた電話番号に電話をかけた。


『あっ、先輩!初めてなのでちょっと色々と準備させてもらっても良いですか?』


「そんなことするつもりはない!それよりあゆの部屋番号を教えて欲しい」


『えっ・・・!?私の部屋でしたいんですか?ちょっと心の準備が・・・』


「そういうのいいから!」


『・・・0000穴だらけですね❤︎いつでも入ってきてください❤︎』


「0階なんてあるわけないだろ!本当に階を教えろ!」


『・・・はあ、2502です』


 俺たちの5階でしかも02ってことは俺たちの真上なのか。


「わかった」


 そして俺た電話を切った。


「・・・ねえ、そーくん、なんでそーくんがあの女の電話番号を知ってるの?」


「えっ、いや、それは・・・」


「今すぐそのメモ用紙破いて」


「で、でもそれは───」


「破いて」


「・・・はい」


 俺はあゆからもらったメモ用紙を破き、初音にスマホを奪われて、電話番号を初音以外全て消去されてしまった。


「・・・なんでこんなことに・・・」


「何か言った?」


「なんでもないです・・・」


 俺は連絡先の消えたスマホを渡され、その画面を見て落胆した。・・・これもどれもあゆのせいだああああああ!!絶対に問い正す!!

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