第345話キスの約束
俺が部屋に戻ったのと同時に、初音が俺の部屋に戻ってきた。
「は、初音!い、言っただろ!?俺は何もしてないんだ!」
「・・・うん、そうだね、えっちなことはしてなかったね」
良かった・・・あゆがカメラに細工とかしてるのかもとか一瞬頭をよぎったけどその心配はなかったみたいだ。
「でも、リビングでは楽しそうに話してたね」
「・・・えっ?」
「そもそもなんであいつを家の中に入れたの?」
「い、いや、初音だと思って開けたらあゆだったんだ、それで閉めようとしたら鉄パイプを挟まれて閉めることができなかったんだ」
映像を見ていたのであればこれが本当のことだと言うこともわかってくれるはずだ。
「ねえ、そのあゆっていうのやめて?私に対する当てつけ?」
「ち、違う」
「じゃあ他の女の名前なんて忘れてね・・・あ、でもあいつも一つだけ良い事言ってたね」
「良い事・・・?」
初音が他の女子を褒めるなんて、頭でも打ったんじゃないかと思うぐらいに珍しいな。
「ほら、早く性行為したほうが良いって話」
ああ、そんな事言ってたな。・・・え!?良い事ってそこなのか!?むしろダメなところだろ!
「そ、それは・・・」
「私なんてもう一年以上も生殺し状態なんだよ?」
「な、生殺しって・・・」
「しかも今そーくんは動けないなんて、むしろ襲ってって言ってるようなものじゃない?」
俺が動けないのはどこかの誰かさんと誰かさんが忍者並みの速さで鬼ごっこしてるのに巻き込まれたからだ。しかも鬼同士で鬼ごっこするなんていう以上事態だったんだ。
「そーくんだって、本当は興味あるでしょ?」
「興味って言われても・・・」
「・・・わかった、じゃあ子作りはまだしなくていいよ」
そもそもそんなことするなんてまだ一言も言ってないけど。
「少しずつ段階を踏んでいけば良いんでしょ?」
「そ、そうだ」
「じゃあ、まずはそーくんから私にキスしてきて?」
「キ、キス・・・!?」
い、色々吹き飛んでるんじゃないか?まずは手繋いだり・・・いや、それは戻りすぎだとしてもキスかぁ・・・したことがないわけじゃないけどほとんど初音からだったし前俺からしたこともあったけどほとんど強制的にって感じだったし・・・そ、そうだ!
「お、俺もキスしたいのは山々なんだけど、車椅子だと初音の唇まで顔が届かないんだ」
これでなんとか言い逃れる!
「じゃあ私がしゃがめば────」
「お、俺的には立ったままキスしたいんだ、ほ、ほら、唇の下の方をぐいってやってキスするみたいな・・・」
本当はそんなハードルの高いことできないけど、これならなんとか逃げられる!
「そ、そーくんがそこまでロマンチストだったなんて・・・う、うん、わかったよ、じゃあ今は車椅子だからそれはできないね・・・」
良かったぁ・・・ちょっと大きいことを言ったけどこれで────
「じゃあ怪我が治ったらそれしてくれるんだよね?」
「えっ・・・」
「楽しみだなぁ・・・そーくんからのディープキス・・・」
「えっ、ちょっと待───」
`バタン`
初音は顔を惚気させながら部屋を出て行った。
「こ、これは・・・」
選択肢を間違えてしまった感が半端ない・・・いっそのこと怪我が治らなければ、なんて思ってしまった。
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