第343話あゆの迫真の演技
「・・・そーくん、ここで何してたの?」
そうだよな、まずはその質問からくるよな。お、落ち着け・・・ちゃんと説明すれば初音だってわかってくれるはずだ。
「ほ、本当に何もしてない!あゆが勝手に───」
「あゆ?まさかこの女の名前?なんで下の名前なんて知ってるの?」
しまったぁ・・・完全にやらかした・・・
「いや、その・・・」
「私と先輩の仲ですからね♪そのぐらいは当然ですよ〜」
余計なことを言うな!そうか、わかった・・・てっきり俺のことを辱めるためだけにこんなことをしたんだと思ってたけど俺と初音を喧嘩させて別れさせようとしてるのか。そうはいかない!
「ち、違う、なんか成り行きで名前を聞いて・・・」
「で?成り行きでヤったの?」
「そんなことしてない!」
くっ、どうやったら誤解を解けるんだ・・・
「まさか先輩があんなに強引だとは思いませんでしたよ〜」
「・・・そーくん、何か遺言は?介錯はつけずに苦しませて殺してあげる」
「ま、待ってくれ、ほ、本当に何もしてないんだ!信じてくれ!」
「え〜、酷いですよ〜白雪先輩が帰ってきたとわかった途端にあとちょ〜っとで気持ちよくなれたのに途端に着替えて玄関に向かったじゃないですか〜」
ニヤッと俺にだけ見えるように微笑を浮かべる。この悪魔め・・・師匠は小悪魔ぐらいの感じで許容できてなんなら色々と相談に乗ってくれたりしたけどあゆは本当にただただ悪魔だ。
「ねえそーくん、まずはちょん切っちゃおっか」
「ちょん切るって・・・」
そんなことされたら本当に死んでしまうけど今初音は今までにないくらいに怒ってる・・・どうすれば・・・
「先輩のアレ気持ち良かったです〜、初めてだから優しくして欲しかったんですけど〜、先輩私の魅力に我慢できなくなっちゃったみたいで〜」
とりあえずあゆをどうにかしないとまずい。ずっとあんなことを嘯いてる。
「は、初音、し、信じてくれ、俺は、本当に───」
「・・・そうだね、ごめん、そーくん、そーくんは悪くないよね」
わ、わかってくれたのか!?
「そーくんは素直で優しいけど、その反面悪い女には騙されちゃうもんね・・・この女に誑かされてやっちゃったんだよね・・・」
え、ちょっと待て、俺は騙されてそういうことをしたことになってるのか!?
「待て待て、俺はそもそも本当に何も───」
「ううん、いいの、私の躾も甘かったし・・・」
全然甘くないです。本当にこれ以上はもうやめてください。
「本当に甘すぎですよ〜、おかげで私もゆるゆるになっちゃいました〜❤︎テヘッ♪」
テヘッ♪じゃない!全く可愛くない・・・どうすれば・・・そうだ!敵の敵は味方、昨日の敵は今日の友だ!
「初音!監視カメラを確認してほしい、俺は本当に何もしてない!」
初音ならすぐに思いつきそうだったけど、この状況を見るだけなら俺がそういうことをあゆとしてたと確信づけてしまっても不思議はない。
言うなれば死体の目の前で血のついたナイフを持っていて僕はやってないですというぐらい怪しすぎるもの。確定してしまっても無理はない。そこが監視の目が届かない場所ならそれは悪魔の証明だ。
───しかし!今まで散々俺のことを苦しめてきた、普通の家にはない監視カメラがこの家にはある!
「・・・この状況だけで十分なんだけど」
「そ、そう言わずに!頼む!もし俺が本当にあゆとそういうことをしてる映像があったら本当に殺してくれて構わない!」
これは俺がそういうことをしてないことを俺自身が1番理解してるからこそ言える言葉だ。
「・・・わかった、もしそーくんがそいつとえっちなことしてたら本当に犯し殺すから」
そう言って初音は俺の部屋を出ていき、自分の部屋に入っていった。
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