第338話後輩の名前

「へぇ、ここで毎日最王子先輩と食事してるんだぁ〜、いいなぁ・・・」


 左人差し指を唇に当てて独り言のように言った。申し訳ないけどそんな可愛い感じで言われても今の俺はそれどころじゃない。いつ初音が帰ってくるのかと内心ヒヤヒヤしてるんだ。


「ここ座っちゃいま〜す」


 そう言ってリビングの椅子に座った。長いされても俺としてはいいことはないため、早めに済ませることにした。


「・・・で、なんのようで君はここに来たんだ?」


「ん〜、君?あ、私のことですね〜、あれ〜?私の名前言いませんでしたっけ」


「聞いてない」


 もし仮に聞いてたとして俺がそれを忘れてるのであれば初音に脳操作でもされたのかもしれないけどおそらく本当に聞いてないはずだ。


「じゃあ改めて自己紹介しま〜すっ!私の名前はあゆ大好き結婚してくださいって言います!気軽に結婚してくださいって呼んでください!」


「そんなの気軽に呼べるわけないだろ!」


 多分あゆの部分が名前か・・・ちゃん付け感覚で大好きと結婚っていうワードを入れてくるあたりどうかしてるんじゃないかと思うけどそれは置いといて・・・あゆか。なんていうか、イメージ通りの名前だな。

 でも、俺としては大事なのは下の名前じゃない。


「う、上の名前もよかったら教えて欲しいんだけど・・・」


「・・・なんでですか〜?」


 ただでさえ他の女の子の名前なんて聞いちゃったら大変なのに下の名前でなんて呼んだら初音に何をされるかわからない。いっそのこと知らぬ存ぜぬを通して君呼びで続行するのもありだけど、名前を知っててそんな呼び方をするのはやっぱり違和感が生じる。ここは上の名前を教えてもらってそっちで呼ぶことにしよう。


「ふ、普通にフルネーム知りたいなぁって・・・」


 ちょっと語弊が生まれる言い方だけどこれなら断らないはず・・・


「え〜、でももし私が苗字教えたら先輩そっちの方で私の名前呼ぶじゃないですか〜、私としては下の名前で呼んでくれた方がドキッとするのでこのままで大丈夫です❤︎」


 俺が大丈夫じゃないんだよ!どうする、まさかこの子が意外な一面でガードが堅いとは・・・緩いからこその堅さか。


「で、早速本題に入っちゃってもいいですか〜?」


 俺として早く本題に入って欲しかったんだけどな・・・俺が小さく頷くと「では」と言って始めた。


「白雪先輩と別れてください」


「・・・は!?」


 い、いきなり何を言ってるんだ。・・・いきなりじゃないか、前も似たようなこと言ってた気がするな、確か・・・恋愛ごっこがどうとか。


「これは先輩のために言ってるんです」


「お、俺の・・・?」


 そう言われると悪い気はしないけどこの子・・・あゆのことだ、きっと何かしらあると思った方がいい。


「ん〜、率直に言うと・・・私とお付き合いしましょう」


「・・・はあ!?」


 こ、こここ、告白されてしまったのか!?

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