第336話初音の一生総明一緒計画

「・・・・・・」


 実は、ここ数日間俺はずっと考えていたことがある。林間学校が始まる前から考えていたことだ。それは───バイトのことだ。

 初音にバイトを禁止にされてからどうにかしてお金を得る方法を考えてみた。例えば自分が社長になるとか・・・無謀だけど一応バイトでもなければ就職でもない。でもこれは俺の中でイメージがつかなかったから却下だ。

 そしてもう一つ、これは割と有力だ。初音に俺のお金でプレゼントさせて欲しいからバイトさせてくれと言う。


「うん、やっぱりこれしかないな・・・」


 これなら俺自身もバイトをできるし、初音だってプレゼントをもらえたらちょっとは喜んでくれるはずだ。


「よしっ・・・!」


 そうと決まれば早速抗議だ。俺はリビングの椅子に座ってる初音に声をかけた。前あの子にエントランスで話しかけられて足止めされたりもしたけど、結局あのあとすぐにデパートの中にある家具が売ってるところとかで宅配を頼み、すぐに届いた。本当にありがたいことだ。


「初音、ちょっと言いたことが・・・」


「ん、なになに!?」


 初音が興味津々に聞いてくる。


「初音前にバイト禁止しただろ?あれを取りやめてほしい」


「・・・は?そんなことするわけないでしょ?」


「も、もちろん俺だってその方がいいと思うけど、ほ、ほら!例えば初音の誕生日とかに俺が稼いだお金でプレゼント用意するってよくないか?やっぱり同じプレゼントって言ってもプレゼントをもらうまでの過程が違うだけで全然違うだろ?」


「あー、うん、確かにそれは魅力的だね」


 こ、これは!好印象なんじゃないか!?ここは一気に押し込む!


「だ、だから俺をバイトしてもいいようにしてほしい!前に初音と霧響が言ってた苦労させたくないとか言ってたけど初音にプレゼントするためなら苦労できる!」


「・・・・・・」


 ど、どうだ・・・?ちょっとセリフがドラマ調な感じがしなくもないけど女子はそういうのが好きだってどこかで聞いたことがある。


「そーくん何か勘違いしてるみたいだね」


「・・・勘違い?」


 な、何か変なことを言ってしまったのか?


「確かに私がそーくんい働くなんて有象無象みたいなことさせたくないしそもそもそーくんは働かなくていいのになんで自分からそんな辛い選択をするんだろうとも思うし社会の邪悪な奴にそーくんがこき使われるのなんて我慢ならないっていうのも前提としてはあるよ?」


 前提にしてはぼろくそに言い過ぎだと思う。


「でも、私がそーくんに働いて欲しくない真の理由は自立させないためなの」


「じ、自立、させないため・・・?」


「だってもしこれからそーくんが働けなくなったらどうするの?そーくんの性格的には霧響ちゃんに頼るなんてことはないし、もしかしたら親に頼ったりするのかもしれないけど、親に迷惑がかからない方法があったらそっちを選ぶよね?そう、例えば私に養ってもらうとか」


 確かに親とか霧響に迷惑かけるぐらいならまだ歓迎してくれる初音のところにいるかもしれないけど・・・俺の思考を読んで───えっ。


「ま、まさか・・・」


「うんっ!高校だけじゃなくてこれからもずっとそーくんが働けないようにしてお金の収入源を無くして強制的にずっと私といてもらうのっ!そうしたら絶対にあり得ないけどもしそーくんが浮気したり血迷って私と別れたいなんて言い出しても私から離れられないでしょ?まあそんなこと言ったらそもそもそんなの関係なしに逃がさないけどね♪」


「・・・・・・」


 ・・・黙ることしかできない。つまり俺がかなり前にバイトしたいって言い出した時からここまで考えてたってことだ・・・恐ろしい。

 ・・・俺にはその一言しか出なかった。本当にすごい時はすごいしか言葉が出ないように、本当に恐ろしい時は恐ろしいの一言しか出ないんだな・・・

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