第323話初音の管理欲

「そーぐううううううううううううんんん」


 初音が文字通り顔を涙でぐちゃぐちゃにしている。


「い、いや、別にそんな気にしなくても───」


「動けないぞーぐんの代わりに私がいっぱいいっぱい色々してあげるからね!」


「性欲処理とか欲求解消とか色々管理してあげるからね!」


 色々じゃなくて一つのことしか管理してないだろ、それ・・・

 それにしても本当にこんな怪我したのか・・・全然実感ないな。どれくらい歩けなくなるんだろう。


「右足の捻挫は大体1ヶ月ほどで治るらしいです」


 1ヶ月か・・・今まで大怪我したことがないからわからないな。


「ひ、左足は?」


 明らかに左足の方が状態が悪いのは言われる前からわかった。


「左足は・・・2ヶ月から2ヶ月半ほどらしいです」


 だいぶ長いな・・・まあでも実際右足に関しては感覚的にすぐに治りそうな気がするから松葉杖的なやつをもらえれば案外楽に生活できる気がする。


「大丈夫だよ!ぞーぐううんん!動けないそーくんを私が一日中看病してあげるからね!」


「・・・えっ」


「顔も洗ってあげるし歯も磨いてあげるしご飯も食べさせてあげるしもちろん体だって洗ってあげるし下の管理までなんでもしてあげるからねっ!」


「・・・・・・」


 ちょ、ちょっと待て・・・今重大なことに気づいてしまった。

 怪我で行動の制限がどうのの前にこの足じゃ初音から逃げることができない・・・多分どう頑張っても初音の監視から逃れることができない。


「・・・ん?そーくん今動けないんだよね・・・?」


 ずっと泣いていた初音が泣き止んだと思ったら不穏なことを言い出した。


「動けないってことは何をしようにも私の助けがいるし私が何かしようとしても抵抗もできないんだよね・・・?」


 待て待て、その思考は良くない。考えを改めろ!俺が怪我をしたことに便乗しようとするな!


「・・・えへへ❤︎」


 えへへ、じゃない!何考えてるんだ!


「・・・あっ、もちろんそーくんの怪我が早く治るように精一杯協力するよ?病院代とかも全部出すからね!」


 病院か・・・確かにそれだったらこの応急処置よりも早く治るかもしれない。


「で、でも病院代なんて何円するか────」


「ううんっ!私のせいなんだから病院代ぐらいいくらでも出すよ!」


 そうか、初音はやっぱり優しいな。


「・・・でも、病院に通ってもやっぱりちょっとの間は怪我は治らないと思うんだよね・・・」


 まあ、それはやっぱり仕方ないものはある。


「だから、その間は私が全部やってあげるね?」


「・・・え?」


「仕方ないよね?治らないなら仕方ないよ!そう!仕方ないよね!」


 あえて仕方ないっていうことで俺が反論するのを封じてきている・・・確かにお金を出されてるんだったら何もしないでくださいとは言えない・・・


「わ、わかった・・・」


「・・・成功❤︎」

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