第321話異次元の鬼ごっこ
騒がしかった自由時間も終わりを告げて、いよいよ林間学校らしく外で行動を起こすことになった。
しおりに書いてあるプログラムを見る限りだと、鬼ごっこをするらしい。
高校生にもなって鬼ごっこと一瞬思ったけど、案外簡単なものではないらしく、体力増強と適応力をあげるために足場が少し悪い林の中でするらしい。
もちろん捕まらないことよりも怪我などに注意してくれとのことだった。
「・・・最悪だ」
本当に最悪だ。何が悲しくてこんな虫が多いような場所で鬼ごっこなんてしないといけないんだ。しかも鬼は初音と結愛っていう俺からするとかなり最悪な組み合わせだ・・・
「もしかして運動は苦手ですか?」
俺が機嫌が悪そうにしていると天銀がそんなことを聞いてきた。
運動は苦手だけどそれ以前の問題だ。運動よりも虫の方が苦手だ。あんなもの本当に絶滅して欲しいと思ったことも何度かある。
・・・大分ひどいから考えを改めたけど。
「運動より虫が苦手だ・・・」
「ああ、虫といえば確かムカデなどのようなものの総称をゲジ目と言うらしい────」
「そんな情報どうでもいい!」
変なところで天然なのが本当に困るところだ。こっちは虫の名称なんて全く興味がない。
「それにしても、こんな広い林の中で勝負になるのでしょうか」
すでに鬼ごっこは開始してから5分ぐらい経つ。にもかかわらずまだ初音と結愛のどちらの姿も確認していない。
因みにあの2人が鬼に選ばれた理由は驚異的な身体能力を持っているからとのことだった。・・・本当にどんでもないな。
「確かに、こんなに広かったらいくら初音達でも誰かにタッチするなんて不可能────」
「最王子君!」
天銀が叫ぶよりも早く、俺は後ろから迫る初音に抱え上げられてしまった。
そしてそのまま爆走している。
「うわあっ!は、初音!タッチするだけで本当に捕獲する必要なんてない!」
俺が風に抵抗しながら、初音にそう進言した。
「そうだけど、あいつからそーくんを守らないと、何されるかわからないからね」
「あいつって────」
噂をすれば・・・結愛が目の前に現れこれまた早い速度でこちらに向かってきた。
「は、初音───」
「大丈夫、私が守ってあげる」
初音はそう言うと、周りにあった木々をその華奢な足でキックして、また目の前に出てきた木を水泳のスタートのようにキックして、バネのようにどんどん前に進んでいく。
アニメとかで忍者がやってそうなやつだ。
そんな異次元な行動に当然俺が対応できるわけもなく、初音に抵抗する意思を見せる。
「無理無理無理!降ろしてくれ!本当に死ぬ!」
一歩間違えたら木の枝が当たるようなところに来ている。
「大丈夫、私が守ってあげる」
それさっきも聞いた!とは言えずそのまま爆走を許してしまう。
・・・あれ?
「初音、もう結愛は追いかけてきてない」
「・・・え?」
初音がその確認をするために後ろを振り向くも、結愛の姿はない───と、思われた直前、上から隕石の如く女子生徒が降ってきた。
────結愛だ。
こんなに機敏に動けるのはおそらくジャージだからというのもあるんだろうけど、それにしたって電柱柱よりも高い木の上の方まで行っていたなんて、どう考えてもおかしいだろ!
「そーちゃんは私の!」
「そーくんは私の!」
ほぼ同時に2人が言うと、初音が結愛を回避しようとした───が、初音は躱すことに成功するも、俺は少しだけ反応が遅れて変に抵抗していたせいで足を伸ばしてしまい───そこに結愛が落ちてきた。
`ドンッ`
「っ・・・!」
俺はそこで痛みによるショックで意識を手放すことになった。
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