第304話初音の女の勘
俺が思い出した隠してることというのは天銀の性別を偽っているということだ。お、落ち着け、初音にバレるような要素はなかった。仮にプールの時になんらかの理由でばれていたとしたら、初音の性格的にその時に問いただしてくるはずだ。よって、天銀のことでないことは確かだ。
「初音に隠し事なんてするわけないだろ?」
「もし嘘ついてたら今度こそどうなっても良い覚悟だよね?私が襲っちゃってもそれはもう文句言えないよね?」
襲っちゃうのはかなり問題ありだろ・・・それにしてもどうするか、どちみち天銀のことを言ったら俺はどうなかわからない。それなら沈黙を貫き通すことにしよう。
「も、もちろん・・・」
「で、何隠してるの?」
「だから何も隠してな───痛い痛い痛い!!」
初音が俺が縄で縛られて抵抗できないのを良いことに耳掻きで力強く耳を抉った・・・っていう表現はちょっと間違ってるかもしれないけど強く引っ掻いた。
「あっ、ごめんちょっと弱かったね、もっと強くするね?」
「ま、待て待て待て、本当に俺は何も隠してない!」
痛みによって迫真の演技ができている自信がある。
「私としてはそーくんの左耳が聞こえなくなっても良いんだけどな〜」
「・・・・・・」
おかしいな、夏近いのに震えてきた。精神的に寒い。
「あれ?震えてどうしたの?まだ夏だよ?何かやましいことがあるの?」
「な、ない・・・」
「そう、じゃあ今度は右耳するよー」
そういうと初音は俺の顔を初音のお腹のほうに向かせ、そのまま右耳の耳掻きを始めた。・・・これは色々とまずい。膝枕されている状態で初音の方向を向く、つまり目の前は・・・恥ずかしい。意識しないようにしよう。
「変だな〜、そーくんは隠し事してるって私の勘が言ってるんだけどなー」
久しぶりに最強の武器、女の勘っていうのが出たな。
「だからそもそも隠すようなこと何もないだろ?」
「・・・そういえばここ最近は霧響ちゃんがいてそーくんの服の匂いとか嗅いでなかったな〜、あれで女の匂いとかがしたりしたら浮気っていう風に確定付けてたりしたんだけど・・・まあ性的興奮もあるけど、今度しようかな〜」
最後の一文は無視するとしてさすがに匂いとかわかるわけ───初音ならわかりそうで怖いな。でも天銀と実際に会っても匂いとかわかってなかったし大丈夫か。
「ねえ、もし隠し事してるなら本当に今のうちだからね?」
「・・・・・・」
「もし今隠してることがあって後から発覚したらもう本当に襲うからね?」
「・・・・・・」
俺はそれでも沈黙を貫いた。今言ってもどちみち俺は終わるからだ。・・・俺の勘が告げている、そろそろ本当に大事があると・・・
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