第303話一時の別れ
今日は5月31日。とうとう明日は6月、霧響が帰省する日だ。霧響は本当ならできる限り長くいるために夜に帰りたいけど、夜だと私が危険な目に遭うとお兄様が心配して夜も眠れないのではということで朝一に帰ることになった。
「お兄様あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
初音は俺に文字通り泣きついてきた。
「べ、別に二度と会えなくなるわけじゃないしそんなに泣かなくても・・・」
「はい?1ヶ月も会えないんですよ?泣くに決まってるじゃないですか」
いきなり泣き止んだな・・・しかも怖い。
「わ、悪かった、いくらでも泣いていいから」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ〜ん!!!!」
またしても一気に泣き始めた。しばらく待ってみると泣き止んで、霧響はそれではと言って続けた。
「そろそろ行きますね、こうしているといつまでも離れられないので・・・」
めちゃくちゃ仲良しの恋人同士が電話を切る前みたいなこと言うな。
霧響がそんなことを言っていると、初音が初音の部屋から出てきて、霧響に言った。
「霧響ちゃん・・・これでもう確実にそーくんは私のだね♪」
「いいえ、お兄様は1ヶ月で揺れるほど腰の軽い人ではありません」
揺れるって・・・そもそも俺は霧響のことを恋愛として好きだなんて言ってないのになんで俺が霧響のことを恋愛的に好きってことになってるんだ。
「はいはい、じゃあね〜♪」
初音がそう言って霧響を外に追い出した。まあ、行動だけ見れば酷いけど一応霧響とちょっと話す時間もくれてたしいい感じに話が終わったタイミングで出てきたところを見る感じだと待っててくれたのかもな。
「さてと・・・」
初音が鍵を閉め俺の方に振り返ってきた。
「これでようやく邪魔は消えたね」
「・・・え?」
俺は身の危険を感じ咄嗟に後ろに振り向き自分の部屋まで逃げようとしたが初値に捕まってしまい、もう何度見たかわからない縄を使って拘束されてしまった。
「な、何をするつもりだ・・・」
「今から、そーくんのことを・・・」
もうこの先に続く言葉なんて嫌な予感しかしない。っていうかちょっと前に似たようなことあったしあの続きとか言うんじゃ───
「耳掻きするね!」
「・・・え?あ、うん」
そのぐらいなら全然良い、むしろ嬉しいぐらいだ。初音が俺のことを拘束したまま自分の膝に置き、膝枕しながら耳掻きを始めた。
「ん〜、綺麗だねー」
初音は俺の耳を見るなりそう言った。・・・感想なんていちいち言わないでほしいな、恥ずかしい。
「耳掻きするだけなら何も拘束なんてしなくてもいいだろ?」
「ねえそーくん今から私がする質問に対して嘘かないでね?」
初音は耳掻きを俺の耳の中で強く擦る。いや、痛い。
「わわわ、わかった、痛いからやめてくれ」
耳の中は割と本当に痛い。当たりどころによっては本当に数日続くぐらいに痛い。
「・・・何か私に隠してることない?」
「隠してること・・・?いきなりなんだ?」
隠してることなんてあったか?特に何もなかった・・・いや、何かあったな、いきなりすぎて思い出せない。
「直感なんだけどなんかそーくんが私に隠し事してるような気がして」
「……」
隠してること、思い出してしまった…
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