第297話総明と初音の舌戦
「お兄様、今日はプールの授業と聞きました!」
そう言うや否や、霧響は朝早くなのに慌ただしく色々なものを俺の目の前に出した。聞いてみると日焼け止めとかサンオイルとからしい。そんな類のものが10個ぐらいある。
「こ、これがなんだ?」
「お兄様の肌が傷ついてしまうかもしれないのでこれをお兄様の体に塗ってから登校してください!」
「しない!」
なんで学校のプールの授業を受けるだけでこんなに日焼け止め類を塗らないといけないんだ。まあ、1つぐらいなら塗ってもいいかもしれない。別に校則違反でもないだろうし。
「と、思ったけどやっぱり1個だけ塗る」
「はい♪是非是非♪」
霧響はこれが「おすすめです!」と言うのを、俺の背中と腕に塗った。
「はあ、お兄様の背中と腕にこんなに濃厚に、生で触れてしまいました」
「変な言い方をするな!」
とにもかくにもこれで学校に向かうことができる。まあ、どちみち登校時間までやることもなかったし、ちょうどよかったかも。
「そーくん、わかってるよね?」
「も、もちろん・・・」
降下するエレベーターの中で初音に諭されてしまった。最近俺は初音の後手を踏んでばかりだな、俺だって言われてばっかりじゃない。ちょうど1ヶ月ぐらいに俺が初音に「でも初音だって浮気しない確証はないだろ?」みたいな話をして話した気がするけど、結局その話は初音に押し切られて終わってしまった。今でこそ話せることもあるはずだ。
「は、初音」
「なに?」
「俺にばっかり浮気するなって言うけど初音が浮気しない確証もあるような無いようななわけで・・・俺からするとちょっと俺だけ言われるのが不満なような気がしなくもなくて・・・」
だめだ、思考はまとまってるのにいざ初音に直接言うとなると初音が何を行ってくるかわからなくて少し恐怖が勝ってしまい、思うように口が回らない。
「私が浮気するって言いたいの?」
「もちろん浮気するとまでは断言しないけど、俺からすると俺だけ浮気するなって言われるのもちょっとおかしいなー、なんて・・・」
よし!よく頑張った俺!かなり回りくどい言い方にはなってしまったけど、言いたいことは言えた!
「私が浮気なんてするわけないでしょ?」
「でもそれは初音目線だとそうなわけで、俺だって俺目線だと浮気なんてしない」
これはいい流れだ。このままいけば初音の悪いところであるすぐに浮気を疑うと言うものを取り除けるかもしれない。
「そーくんには前科があるでしょ?他の女と話したりとか他にも色々あるよね?」
・・・確かに結愛とかの件は浮気と取られてもおかしくない。それは認める。が、それなら俺だって言えることはある!
「初音だって俺に隠れて天銀とやりとりをしてただろ?」
本当はそんなこと全く気にしてないけど、目には目をだ。ここで初音も俺と同じことをやっていると気づいてもらい、その上で「そのぐらいの接触は普通だから気にしてない」と言えば、俺も初音もハッピーエンドだ。まあ、実際天銀は男じゃないけど、初音は男だと思ってるんだから男と接してると同意で考えよう。
「それはそーくんの浮気を調べるためだよ?それ以外で私が何か浮気を疑われるようなことした?」
「それは────」
「そもそもその浮気を調べるのだってそーくんがあの女とか他にも色々と怪しい行動をするからこそ深まった疑念の結果だよね?」
「だ、だから────」
「つまりそーくんが怪しい動きを過去に一度も見せてなかったら私だってそもそも天銀に依頼することだってなかったし、そーくんが私の浮気を疑うこともなかった、だからそーくんは浮気しないことだけ考えればいいの、違う?」
ここまで完膚なきまでに言われてしまうと何も言い返せない。確かに天銀と初音が話したりするきっかけを作ったのは俺が過去に結愛に浮気しそうになったっていうのも関係して疑念が強まったんだろうし・・・
「そ、その通りです・・・」
結局認めてしまった。いつもいつも本当に情けない。
「はあ、何を思ったのか知らないけど私に逆らうなんてしない方がいよ?」
話が終わった頃にようやくエレベーターがエントランスについた。俺たちは20階に住んでいるため、エントランスに来るまでの間でも、ちょっと時間がかかる。俺はそんな敗北の空気感のまま、学校に向かうことになった。
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