第264話背中流しの選択
厄介なことになったな・・・
「ほら、そーくん、早く座って!私が背中流してあげるから!」
初音が俺の背中を洗うと言って聞かない。家の中ならともかく今は温泉で初音も心なしかちょっとテンションが上がってる。そんな状態で背後を取られたら何をされるかわからない。なんか忍者みたいなことを言ってるけどそういうことではない。
「じ、自分で洗うから初音も背中洗ったら・・・?」
「私はそーくんが遅かったから先に洗ったよー、あっ、でもそーくんが私の体を洗ってくれるっていうならありがたくお願いするけどね❤︎」
「それはちょっと難しいな」
「は?難しいって何?」
しまった、声に出してしまった。
「もしかして私の胸が小さいからそんなの洗う価値もないって言いたいの?」
なんで俺のちょっとした一言が俺の命に関わるような発言に変わってるんだ。
「そういうことじゃなくて俺の気持ちの問題だ」
いつも俺は取り乱してばかりいるけどたまには俺が冷静なところを初音に見せつけよう。
「気持ちって何?他に女がいるから私の体を洗うわけにはいかないってこと?」
だからなんでそうなる・・・
「そ、そうじゃなくて、普通にちょっと恥ずかしいっていうか・・・」
し、しまった!今日は冷静に対応して初音を躱して俺の印象を良くしようと思ってたのに・・・
「あ、恥ずかしがってたのー?そーくん、可愛い❤︎」
「違う、いや、違うことはないけどとにかく違う!」
「うんうん、照れなくていいからねー」
完全に遊ばれてるな。
「んー、まあそーくんにはレベル高いよね」
どうやらわかってくれたみたいだ。
「じゃあ私がそーくんのこと洗ってあげる!」
前言撤回、全然わかってくれてない。
「そういう問題じゃなくて、体は一人で洗うから、初音はどこかに行っててくれ」
「なんでそんなに私のこと遠ざけようとするの?もしかして浮気────」
「あー!もうわかったわかった、じゃあ背中だけ洗っていいから!」
「うん♪」
結局丸め込まれてしまった。そして俺はシャワーの前にあった桶に座るよう初音に諭され、大人しく座った。
「じゃあまずは背中からだよー」
「う、うん・・・」
`まずは`って、俺は背中だけって言ったと思うんだけど、まあそれは後で言えばいいか。
「そーくん!洗い方なんだけどBとDどっちがいい?」
「えっ、どっちが何なんだ?」
「それはお楽しみ❤︎」
お楽しみって言われても俺からしたら運なんだけど・・・まあなんとなくでいくか。
「じゃあDで」
「・・・へえ、そーくんはDがいいんだー」
「えっ、いや、うん、まあ内容は知らないけど、なんとなくで────」
「BカップよりDカップの方が好きなんだー・・・」
「待て待て!なんでそんな話になってるんだ!」
さっき洗い方って言ってたよな?俺の聞き間違いでなければ胸の大きさなんて言ってなかったはずだ。
「そうだけどそれでもBとDだとDがいいんだよね?」
「あー、いや、気分が変わった、Bで」
「わかった!じゃあBの洗い方で洗うね♪」
なんなんだこの命懸けの茶番・・・
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