第260話夢と現実の違い

「そーくん、今あの女のこと見てたよね?」


「ま、曲がり角を確認しようとしたらたまたまいただけで────」


「言い訳なんて聞いてないの、家に帰ったらお仕置きだからね」


「・・・・・・」


 学校登校中、俺が曲がり角を確認しようとしてたまたま女の人がその視界に入っただけでこの有様だ・・・そして一応起きた時に実は咄嗟に本棚とかも確認してみたけど相変わらずすかすかだった、さっきのが夢だったんだなと改めて自覚する。なんか一生寝てたいとか夢を見ていたいとか言ってる人のことを今までは寝過ぎは良くないぐらいに思ってたけど今日のでそれがよく分かった。


「はあ、本当にあんなホルスタインみたいなのの何がいいんだろう」


「ほ、ホルスタイン?」


 日本人は日本語で喋ってほしいと切実に思う。


「乳牛とか肉乳とかを目的として飼育されてる牛のこと」


 本当になんでそんな知識があるのに変な方向に行くんだ・・・その知識をもっと上手く使って軌道修正してくれ!っていうかあの夢の中で見た初音のほんの一割でいいから返してほしい。


「なんかそーくんまた他の女の子と考えてない?」


「か、考えてない・・・」


「んー、なんかおかしいなあー、もしかして私のこと考えてるの?」


「そ、そうだ」


 うん、嘘はついてない。


「あれー、私の事考えてくれてるなら私嬉しいんだけど、なんかなー、しっくり来ないっていうか・・・私だけど私じゃないっていうのかな?」


 実は答えを知っててわざと外してるんじゃないかと疑いたくなるレベルで的確だな。まあ、仮にバレてたとしても夢の中の初音になら別に怒られたりはしないだろう。


「な、なんだよそれ」


 でも極力バレないようにして悪いことはないと思うのでここははぐらかしておこう。


「あっ、そうだそーくん、そろそろ私たちも───しない?」


「は、はあ!?何言ってるんだ!そんなことするわけないだろ!!」


「ごめん♪その反応が見たかっただけだから」


 心臓に悪いな、謝る人間の態度じゃない。


「あっ、でもしたくなったら別に感情が籠ってなくても性欲処理としてしてくれても────」


「しないしない!何を言ってるんだ!」


 本当にいきなり何を言ってるんだ・・・しかもこんな外で。


「ごめん・・・私そーくんが私のことを襲ってきたり無茶苦茶にしてきたりしてきてくれないから焦っちゃったのかも・・・」


 そんなシリアスな空気で言われても俺からしたらただただ初音がおかしくなったようにしか見えなかった。


「でっ!裸繋がりじゃないんだけど、今度温泉行かない?」


 絶対それ言いたかっただけだろ・・・

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