第259話初音の嫉妬心が無い世界
「そーくんー、大丈夫ー?まだ寝ぼけてるのー?」
初音が俺の頬をつねる。
「おいおい、痛いからやめ────」
・・・あれ?痛くない。どうなってるんだ、頬をつねられても痛くないなんてどういうことだ?まっ、まさかこれって───
「夢・・・?」
夢ならこの異様な状況の変化も納得できる。初音が女の子が表紙のラノベを見て尊敬するなんて絶対にありえない、いつもなら「そーくんまだこんなも持ってたんだー、そーくんごと焼くしかないね・・・」とか言いそうなのに。なんか聞いたことがある、確か、そう、あれだ、明晰夢。夢の中にいることを自分で自覚できて夢を操作できるとか聞いたことがある。
「そういえば神社で神様に願い事下着がするな・・・」
ということは神様が現実ではどうやっても叶えられないからせめて夢の中でと叶えてくれたのか?
「んー・・・」
という事は今の初音は嫉妬しないのか。まあせっかくだし普通に生活してみよう。
「そういえばさっき霧響とどっか行くとか言ってたけどどこに行くんだ?」
「え、本当に寝ぼけてるの?今日はプールに行くんだよ?」
プール・・・現実とは季節が違うな。それにしてもプールか・・・去年は「他の女の水着姿までそーくんの視界と頭に残るなんて嫌」とか言って結局一度も行かなかった気がする。
「あ、ああ、そうだったな」
俺はちょっとこの世界観に慣れるのに時間がかかり、結局プールに着くまではのらりくらりで移動した。まあそろそろ`この`初音にも慣れてきた。正直言って完全に別人だ。いつもならどこかに移動する最中「今あの女見てたよね?浮気なの?ねえ浮気なの?」と基本的に一回は絶対に言われるのに今日の道中はむしろ「あー!あの人が来てる服可愛いー!!」とか言って、普段の初音なら絶対に言わない言葉をどんどん言ってくる。つまり、顔と声は初音でもその中身はもう全く別人と言ってもいい。
「えっ、っていうかここなのか?」
「うん、そうだよ?」
なんだこれ、目前にするとでかすぎる。俺が思ってたプールのスケールじゃない。大体市民プールぐらいかなとか思ってたのにこれは完全にアトラクションとかもあるやつだ。
「じゃあ入りましょうか、お兄様」
「あ、ああ・・・」
そういえば、霧響は?霧響はもうなんか兄弟で結婚しようなんていう考えはないのか?ここが明晰夢なら神様は叶えてくれてるはずだ!ちょっと霧響に聞いてみるか。
「なあ霧響、俺と結婚────」
「えっ!?結婚!?お兄様がとうとう私に婚姻届を!?え!?ぜひ!今すぐ市役所に行きましょう!!」
「えっ、あっ、いや、じょ、冗談───」
「はい?冗談?それは婚約という大きなライフイベントで嘘をついたという事ですか?」
神様!!!!まあ確かに初音のことしかお願いしてないけど、どうせなら神様の慈悲的なやつで霧響のことも常人にしてほしかったな・・・
「まあまあ、夫婦漫才はそのぐらいにして、早く行こ?」
いや、だから誰なんだよ・・・とりあえず俺たちはその市民プールの中に入ることにした。なんだ、嫉妬しなければ初音は本当に最高の彼女────
`ドンッ!`
「えっ・・・!?」
俺はベッドから状態を起こした。ようやく夢から覚めたらしい。どうせならいっそのことあのまま覚めなくてもよかったかもしれな────
「そーくん今夢の中で浮気してたでしょ」
「えっ・・・」
的確すぎる・・・が!俺は浮気はしてないない。あれを初音と呼んでいいのかわからないけどとりあえず浮気はしてない。
「い、いや、夢の中にまで初音が出てきて・・・」
性格全然違うけど・・・
「あれ?そう?んー、おかしいなあ、今のそーくんは嘘をついてる感じでも無いし・・・でもどこか引っかかるなあ」
「・・・・・・」
初音自身とはいえ夢の中で性格も違えば浮気になるのか・・・?
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