第252話探偵と友達

「おーい」


「へっ、あっ、はい」


 そう言うとまた時が動いたように口を開きだした。


「す、すいません、男の人に手を握られるのが初めてだったので・・・」


「男の人って・・・」


 まあ確かに同性に手を握られるなんて言うのは人によっては一生経験しないことかもしれないけど、まさか放心するとは・・・


「別にそんなに驚かなくても良いんじゃないか?異性から手を握られたならまだしも男同士で手を握っただけなんだし、まあその文章だけ聞くとちょっとあれだけど・・・」


「えっ、あっ、そ、そう、ですね」


 まだちょっと放心状態なのか、まあ人によってはそういう人もいるか。


「それにしても依頼なんて、どんな仕事してるんだ?」


「探偵です」


「・・・た、探偵?」


「はい」


「えっ、あのアニメとかゲームでよく出てくるあの!?」


「まあ、一般的な認識としてはそんな感じですね」


 た、探偵!?嘘だろ!?なんか頭良さそうで大人的な感じで俺と同い年ってだけでも驚きなのにちゃんと仕事もしててしかも探偵って・・・


「すごいな」


「・・・すごい、ですか?」


「ああ、高校生で働いておまけに探偵って、すごいの一言だ」


「・・・そうですか」


 俺がそう言うとこの人は上を向い───あ、そういえば。


「名前はなんて言うんだ?言いたくなかったら───」


「天銀です」


「天銀・・・下の名前は?」


「下の名前は・・・今度言います」


「えっ、あ、ああ」


 上の名前を言ったなら下の名前を言ってもあんまり変わんないと思うんだけど・・・まあいいか。


「じゃあこれからは天銀って呼ぶようにする」


「はい、僕も最王子君と呼ばせてもらいますね」


「ああ」


 なんか、青春してる気がする!初音のせいで青春できなかった俺が初音のおかげで今天銀と友達になれた、これは何とも言えないけど結果────


「そーくんっ!」


「ひっ・・・」


 もはや聞き慣れた初音の怒っている声が聞こえてくる。


「それに探偵も!なんでそーくんを見つけたなら私に連絡くれなかったの!?」


「あくまでも僕が依頼されたのは浮気調査なのでそこで白雪さんに連絡をとる義務は無いと判断しました」


「ふんっ、まあいいや、それよりそーくん!」


「はい・・・」


「部屋で安静にしててって言ったよね?」


「あー、いや、でも熱は引いたし、ちょっとぐらい体を動かさないとむしろ体に悪影響かと思って───」


 俺が喋っているとそれを気にしないと言わんばかりに俺のことをお姫様抱っこした。


「女子高生にこんな軽々と持ち上げられるのに何が体に悪影響なの?本当にそんなの気にしてるなら普段から運動とかしてると思うけど?」


 そ、それを言われると反論できないけどたまに運動したい気分の時ぐらいあるだろ・・・でも説得力がないな。


「罰として今日はこのまま家に帰るよ」


「ええ!?外でお姫様抱っこしながら!?」


「そーくんの顔を常に見ながら帰れるから私としてはご褒美だね❤︎まあ、そーくんとしてもご褒美だよね♪」


「か、勘弁してく───うわっ!」


 初音がそのお姫様抱っこ状態で歩み始めた。

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