第251話総明の喜び
「だめだよ!まだ安静にしてないと!」
「え、でももう熱も引いたし・・・」
俺がもう熱も引いたし学校に行くと言ったら初音と霧響が大反対してきた。
「だめですよお兄様!まだお熱が36.5度もあるじゃないですか!!ちゃんと熱を全て無くしてからでないと!!」
36.5度って・・・全然平均的だろ。っていうか全部熱をなくすってなんだ?比喩的な表現だよな?比喩的な表現じゃなかったら俺死ぬことになるけど────
「とにかく!お兄様は今日安静にしていてください!」
「・・・わかった」
「・・・今日はやけに素直ですね」
「私も思った」
「え、い、いや、そんなことないって」
「「ふーん・・・」」
二人は全く同じ疑いの目を俺に向けている。
「まあ、いいです、では私はお水を持ってくるのでここで待っていてください」
「私はおかゆ持ってくるからここで大人しく待っててね」
そういうと二人は同時に俺の部屋から出て行った。おそらくキッチンに向かったんだろう。
「・・・・・・」
なんか言われてみれば熱は引いてるはずなのにちょっとしんどい。昨日ずっと部屋の中で過ごしたせいからか・・・ちょっとぐらい散歩してもバチは当たらないはずだ。
「──────」
俺はかくれんぼの極みとでも言わんばかりにこっそり家から出て適当に家の周りを歩くことにした。そして俺がエントランスから出ると────
「最王子君、こんにちは」
「えっ、あっ、ああ・・・」
3日連続で会うなんて何か裏があるとしか思えないけど・・・
「少し話しましょう、今日は前のように雨は降っていないみたいですし」
「そ、そうだな・・・」
そのまま俺たちは適当にどこへ向かうでもなく、歩き始めた。そしてしばらくすると公園があって、ベンチがあったので俺たちはそこに座った。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
俺は無言に耐えきれず口を開いた。
「そ、そういえば俺のこと家まで運んでくれてありがとう・・・」
「あー、いえ、気にしないでください、当然のことです」
「・・・それにしてもよく会いますね」
俺はぽろっと本当に聞きたかったことを口にした。なぜかつられてさすがに連日会うって言うのは何かあるとしか思えない。すると、その答えを教えてくれた。
「そうですね、実は数日前からあなたのことを白雪さんに`依頼`されて尾行させていただいていました」
「び、尾行!?」
いや、その前に依頼ってなんだ?警察とかそう言う感じなのか?だとしたら俺が何か知らない間に犯罪を犯していて、いや、その前に白雪さん?白雪さんって初音か?師匠がそんなことをする理由はない。なんで初音はそんなことを────
「もう依頼も今日で終わりなので、言っても問題ないと思いますが、依頼内容は浮気調査とのことでした」
「う、浮気調査!?」
なんなんだ浮気調査って、なんかドラマとかで薄ら聞いたことあるなあぐらいの感じなんだけど、そんなの本当にあったのか。
「はい、どうやら最王子君が過去に100回浮気しているとのことで」
「100回って・・・」
「もちろん、ちゃんとその100回の内訳を聞いて浮気の定義が僕とは違うなと思いましたが、まあそれは人それぞれです」
おお、なんか改めて久しぶりにまともな人と会話してる気がする。
「本当にちょっとおかしいよなあ・・・」
「まあ、平均的に見るとそうですね」
ちょっと硬い感じはあるけどなんか周りにまともな人がいるだけで安心感がある。実はちょっと類は友を呼ぶなんじゃないかと疑ってたけど、そんな心配はする必要がなかったな。
「あー!やっぱり分かち合えるって良いなー」
俺はそう言いながらこの人の手を取って両手で握った。別に俺に男好きの趣味があるとかそんな理由じゃなくて単に喜びを表したらこうなった。
「やっぱり俺は異常者じゃなかった────あれ?」
ふとこの人の顔を見てみると固まったまま動かない。
「えーっと、え?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
だから沈黙恐怖症予備軍の俺にこの空気はきつい。・・・なんだ?俺はそんな放心するほどの何かをしてしまったのか?
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