第253話霧響と恋愛ゲーム

「お兄様!」


「ん、なんだ?」


 今日は休日で特に何もすることはなかった中、霧響が目を輝かせて話しかけてきた。


「お兄様!私がお兄様のために遊戯を買ってきて差し上げましたよ!」


「遊戯・・・?」


「娯楽とも言いますね」


「娯楽・・・?」


「ゲームとも言います」


 なら最初からそう言ってくれ、何だ遊戯とか娯楽とか、そんな表現現代で初めて聞いたな。それにしても霧響が俺のためにゲームを買ってきてくれたってことか?それはかなり興味深い話だ。


「どんなゲームを買ってきてくれたんだ?」


「それはっ!」


 そう言うと、霧響が携帯ゲーム機のカセットをゲーム機に挿れて俺に手渡した。ゲームを起動した瞬間、女の子の声でタイトルコールがされた。


『妹!禁断の愛!!』


「・・・・・・」


 そのタイトルコールの後にいかにもギャルゲー的なBGMが流れてきた。


「って!なんなんだこのゲームは!」


「以前のライトノベルはお兄様に拒絶されてしまったので今度はゲームでと思いまして、ゲームなら感情移入もしやすくなって妹という存在の大切さをわかってもらえるはずです!」


 いや、俺がこの前あの変な妹系ライトノベルを拒絶したのは内容が嫌だからで、似たような内容のゲームをしても変わらないと思うんだけど・・・まあ、女の子が出るゲームなんて普段ならできないわけだし、どうせならちょっとやってみよう。


`ピコン`


 俺がSTARTの文字を押すと早速物語が始まった。


『お兄様!愛しています!結婚してください!!』


(妹から唐突にプロポーズされた、どうしよう)


1『俺たちは兄弟だろ?』

2『結婚しよう』

3『俺から言うつもりだったのにな・・・』


「・・・・・・」


 なんだこの選択肢は、否定する奴が無い。強いて言うなら1がちょっと否定的な内容だけど2と3に関しては論外だ。


「私は別に無理強いしないので、お兄様の好きなものをお選びください」


「そ、そうか」


 初音はなんか強要してきたりしたけど霧響はあくまでも自主性か・・・それを聞いて安心した。俺は安心して1を選択した。


『兄弟が結婚できないなんて人間が勝手に作ったルールです、そんなものは人間の感情には遠く及びません』


1『確かにそうだな』

2『結婚しよう』

3『それもそうかもしれない』


「・・・は?」


 これ選択肢の意味あるのか?どれを選んでも肯定してるけど・・・いや、そんな意味のない選択肢なんてあるわけがない、きっとこの中のどれかに妹のことを否定する選択肢があるはずだ。


「・・・・・・」


 可能性があるのは3ぐらいか、3はかもしれないって言ってるだけど確定はしてない。よし、3にしよう。


『そうですよ!では早速────』


(俺は妹と一線を超えてしまった)


【ハッピーエンド】


「・・・はあ!?ハッピーエンド!?これが!?」


「よかったですね・・・ぐすん」


 霧響はなぜか泣いている。いや、泣く理由が申し訳ないけど全くわからない。


「まあ、これで妹の良さと言うものが────」


「わかるか!余計に嫌になった!」


「・・・そうですか、まあこれはちょっとお兄様には早すぎましたね」


 俺に早すぎたって・・・どの目線だよ。

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