第228話新しい席と初音の提案

 そういえば俺の前は誰なんだ?まだ誰も座ってないけど・・・


「あ、空いてる席は今日欠席してる桃雫さんの席だから座っちゃだめだよー」


 と、先生が言った。


「空いてる席・・・?」


 ま、まさか俺のこの前の席のことなのか?だとしたら嫌な予感しかしない。今日は何故か欠席してるらしいけどもし登校したら・・・


「・・・・・・」


 気まずすぎて俺は死ねるかもしれない。割と冗談抜きで。前には結愛で隣には初音って、どんな席なんだよ・・・もし運なんていうものが存在するなら初音は運が良くて俺は運が不幸中の不幸だな。普通は不幸中の幸いとか言って言い回しをするんだろうけどあいにく幸いなんて俺の周りにはない。周りにあるのはどう考えても不穏な空気にしかならないだけの不幸だ。


「はあ・・・」


「どうしたの?そーくん」


「いや、前の席、結愛・・・」


 カタコトになってしまった。


「それが?」


「それがって・・・」


「そーくんが浮気するつもりないなら別に誰が前でも関係ないよね?何か不安に思うってことは浮気するつもりなの?」


「そうじゃないけど・・・」


「じゃああいつが来ても気にせずにいつも通り私といちゃいちゃしてればいいの!」


 別にいつも初音といちゃいちゃはしてないと思うけど、まあとりあえずあんまり気にするなんてことか。


「わ、わかった」


 そして放課後、俺は初音に生徒会室に着いてくるように言われ生徒会副会長癒し係とかいう謎の職業に徹していた。職業に徹すると言っても特に何もすることはない。ただただ棒立ちで初音の方を見ているだけだ。


「あー!やっぱ仕事場に癒しがあると進捗具合が違うねー」


 初音にとってはこれが癒しになるらしい。謎すぎる・・・


「あっ、そうだ、そーくん」


「・・・ん?」


 初音が仕事の手を途中で止めて俺に話しかけてきた。


「明日からちょっとの間だけ登校とか下校は別々にしよ?」


「えっ・・・」


 初音にしては珍しいな。


「寂しいっていうのはわかるけど、ちょっと色々あって・・・」


「なるほど・・・」


 どんな理由があるのかわからないけどあの初音が俺から離れるなんてよほどな理由があるんだろう・・・さすがに今の言い方は自意識過剰だったかもしれない。


「わかった」


「・・・・・・」


 まあ俺もちょうどずっと初音といるより少しぐらいは一人の時間が欲しいと思ってたし、ちょうどいい機会かもしれない。


「まあでも今日は一緒に帰るからね!」


「うん」


 そして俺と初音は一緒に帰った。


ー初音Partー


 明日からとうとうそーくんの浮気調査が始まる。ちょっと不安だけど逆にここさえ何もなかったら私はそーくんをなんの曇りもなく信じることができるから楽しみでもある。


「・・・・・・」


 私はなんともいえない気分のままそーくんと一緒に帰った。

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