第227話席替えの運命
とうとうこの席ともお別れか・・・いや、席っていうか初音の隣からお別れか。これで少しでも`解放`される。
「・・・・・・」
本当は彼女である初音との時間を束縛と考え、それから解放されるなんていう考え方はしたくないけどそう思いたくなるぐらい俺は初音と一緒にいる。一緒じゃない時といえばトイレに行ってる時とお風呂に入ってる時ぐらいだ。寝てる時も朝起きたらいつの間にかいたりするし・・・だから俺も少しはプライベートな時間が欲しい。それが席替えなんていう小さいものでもないよりは全然いいだろう。
「で、みんな気になる席替えの方法なんだけど───」
俺も正直気になっていた。もし生徒が自由に決めていいとかなら俺はまた初音の近くになるかもしない。
「くじ引きでーす!」
くじ引き・・・それなら完全に運だな。俺はちらっと初音の方を見る。
「・・・・・・」
特に動じたりはしてないな。最悪俺と席が離れてもいいってことか?まあ俺としてはそれで助かるんだけど・・・
「じゃあ一人一人前に来てくじ引いてねー、そのくじにどこの席か書いてるからー」
「「「「「はーい」」」」」
生徒一同が声を上げた。そして俺は初音と席が近くにならなかった時にもし何か言われたら怖いので予めフォローを入れておく。
「は、初音、まあ席が離れても家とかではずっと一緒にいるんだしあんまり気にすることじゃないと思う」
「・・・ん?そんな心配する必要ないよ?」
「えっ・・・」
「私は絶対にそーくんの隣の席だから心配しないで♪」
「・・・・・・」
絶対に、か。何か仕込んでいるのか?いや、仕込むなんて不可能だ。くじ引きは今先生が初めて出したやつなんだし。
「じゃあみんな並んでー」
先生が合図を出した。刻一刻と俺のくじ引きの番が迫っている。そしてとうとう俺の番がやってきた。俺は恐る恐るくじを引いた。くじに書いていたのは──
`教室入り口側一番後ろ`
「・・・・・・」
入り口か・・・割と今の席は授業中とかに窓の外を見て気分を落ち着けたりできて好きだったんだけど、新しい席じゃそんなことはできそうにないな。
「初音は・・・」
俺のすぐ後ろにいた初音も、もうくじを引いていてなんの躊躇いもなく、自分の席にある教科書とかが入っている鞄を持ってくじで引いたであろう場所に向かった。てっきり俺の場所とかを着てくるのかと思ってたけど、そうでもないのか。
「俺も席につくか」
俺も新しい席につくべく自分の席から鞄をを持って新しい席に向かった。
「んー・・・」
落ち着かないな、入り口ってことは明日毎日俺の後ろを誰かが通るってことだ。落ち着いて本を読んだりもできないかもしれない。
`トントン`
隣の人から肩をとんとんとされた。俺がそっちの方を向くと──
「そーくん❤︎」
「は、初音!?」
そう、俺の隣には疑いようがなく、初音がいた。
「な、なんで・・・」
「だから、心配する必要なんてないって言ったでしょ?」
「い、いや、ど、どうやって俺の隣に?」
くじ引きでイカサマなんでできないはず・・・できたとしても多少は準備がないとできないだろう。
「運命だよ」
「・・・は?」
「だから、何もしてないよ、`運`だから」
「・・・・・・」
まさかただの運で思った通りのところを引き当てるとは・・・なんで初音は運まで味方につけてるんだ・・・
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