第224話総明の誤解

 初音の前に着いた瞬間俺はすぐに誤解を説くべく頭より口を動かすことに専念した。


「初音!ま、待ってくれ、初音の言いたいことはよくわかる」


「・・・・・・」


「俺が今月愛と話してたから浮気を疑ってるんだろ?だが!今のはただ`友達`と話してただけで決して恋愛感情を持って話してたんじゃないんだ」


 ここの説いていけば初音もわかってくれるはずだ!


「・・・そーくん、全然わかってないね」


「・・・?」


「恋愛感情を持ってるとかそういう話じゃないの」


「・・・?」


 初音が何を言っているのか理解できない。というより何を言いたいのかがわからない。何が言いたいんだ?


「そーくんが私以外の女と話したっていうことが私は嫌なの」


「・・・ん?いや、だから恋愛感情は持ってないんだ」


「だからそんなの関係ないんだって」


「恋愛感情を持ってないなら浮気の心配はないだろ?」


「・・・あー、そういうことだったんだ」


 初音は深呼吸をすると俺のことを屋上まで連れ出した。


「は、初音、いきなりこんなところまで───」


「私が怒ってるのは恋愛感情の有無じゃなくてそーくんが他の女と話してるのが嫌なの、わからないの?」


「だからそれは俺が浮気する可能性があるからだろ?」


「浮気関係なしに嫌なの」


「・・・・・・」


 こ、これは・・・ちょっと前まではこんな感じじゃなかったはずだ。いや、もしこんな感じだったとしたら俺が気付けてないだけなんだろうけど、まさか理由もなしにとうとう俺が他の女の子と話したら嫉妬し出すようになったとは・・・原因はあるにしろ理由がないのは改善のしようがない。しかも前は月愛だけちょっと監視が緩かったのに今となっては関係がないのか・・・それはゴールデンウィーク明けだからかもしれないけど。


「な、ならわかった、初音は俺が霧響と話すことは許してくれてるだろ?」


「まあ、一応二人は兄弟だし、霧響ちゃんは将来的に私の妹になるんだし」


「じゃ、じゃあ、その考え方をもうちょっと幅広くしてみないか?」


「・・・幅広く?」


「あ、ああ、霧響だけじゃなくてあと一人だけ対象を増やしてみるとか・・・」


 これで月愛と普通に話すのを許してもらえるようになれば俺の周りには珍しいまともな友達ができて色々と助かるんだけど・・・


「・・・もしかしてあの女のこと?」


「いやあ、まあ、その・・・」


「・・・いいよ」


「・・・え!?本当か!?」


「でも、その代わりそれ以外の女のことは絶対に見たらだめ、あと喋ってもダメ、それを条件になら、いいよ?」


 まさか初音が認めてくれるとは思わなかったな。初音のことだから何か裏があるかもしれないけど、今はとりあえず友達と話せることを喜ぼう。


「・・・・・・」

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