第222話初音は認めてほしい

「こうして`二人で`登校するのも久しぶりだねー、そーくん♪」


「う、うん・・・」


 二人でを強調しているのがなんか不気味だな・・・なんなんだ。


「まあでもそーくんが妹にまで手を出す人じゃなくてよかったー」


「当たり前だろ?大体俺は浮気なんてしてな──」


「・・・また言わなきゃダメ?」


「・・・だ、大丈夫です・・・」


 ちょっと前に話されたことと同じことの繰り返しになりそうだったからここは言わないでおいてもらった。


「あーあー、でも今日から学校がまた始まっちゃうからまた学校の女生徒にまで気を配らせないといけないんだねー」


「あ、安心してくれ、俺は浮気なんてしないから」


「どの口が言ってるの?」


「・・・・・・」


 もはや反論の余地がない。いや、俺は本当に浮気なんてしてないけど浮気してると疑われるようなことをしてる時点でそれは浮気と言われてしまったら論述的に反論の余地がない。


「初音、その・・・か、勘違いしないでほしいんだけど、俺は浮気なんてする気もないし、今までだって浮気したことは──」


「あるよね?あの女と」


 あの女・・・結愛のことか・・・


「ま、まあ・・・結愛の時はちょっと俺も精神的に錯乱してたりしたけど、い、今はもう大丈夫だから」


「今は大丈夫なのは当たり前で、今までも浮気したことないっていう思考のせいで浮気なんてする可能性が高くなるんだからまずはその思考を変えてもらってもいい?`俺は過去に愛すべき恋人を裏切ったから今度こそは裏切らない`っていう誠意を見せるためにも今ここでちゃんと認めてくれる?`俺は過去に浮気をした`って」


「・・・・・・」


 正直耳が痛い。いっそのこと耳を塞いでしまいたいことを連発してくるな・・・


「えーっと、お、俺は過去に浮気をしました・・・」


「何その言わされてる感じ」


「そ、そんなことないと思う・・・ますよ?」


 初音の畏怖感が凄すぎて下手な敬語になってしまった。


「・・・まあいいや、今度はっきりとそーくんの言葉で言ってもらうとして今はとりあえずそのことを心の中に留めておいてくれたらそれでいいから、ほら、早く行くよ」


 初音が俺の腕を引っ張って前に進み始めた。ものすごく力強く・・・


「い、痛い・・・」


「・・・・・・」


 さらに握力が強くなった。


「い、痛いって、初音・・・」


「・・・ふんっ」


 初音は首を横に逸らした。


「・・・・・・」


 しばらくの沈黙を経て、俺の方に向いて言った。


「浮気された時の私の心の方が何倍も痛いからねっ!」


「わ、わかりました・・・」


 その浮気っていうのもそもそも初音の思い込み・・・とも言えない。言えないことが多すぎる、そろそろ俺にも人権というものが欲しいな。

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