第220話霧響の目算
「・・・え?」
エレベーターに乗った霧響は驚いた。
「え、ここ何階まであるんですか?」
「33階だよ」
「・・・・・・」
霧響はちょっとの間黙り昇るエレベーターの音だけがエレベーターの中に鳴り響いた。多分霧響も俺が初めてここに来た時と同じように驚いてるんだろう。まあ無理もない。本来なら俺たちが住めるような場所じゃない。
「す、素晴らしい・・・!」
「・・・え?」
「お兄様にはやっぱりそのぐらいの高いところでないといけません、そもそもお兄様は生まれる場所を間違えてしまったのです、生まれる場所さえ違えば幼少の頃から帝王学を教養の一環として───」
霧響はせっかくガラスになっていて外の景色が見えるのにそれに全く気づかず自分の世界に入っている。まあ俺も初めて来たときは気づかなかったんだけど俺とは気づかない理由が違いすぎる。
`ピコン`
「着いたよ」
「───でもやっぱり生まれる場所が・・・あ、もう着いたんですか?」
喋りすぎてエレベーターが到着したことにすら気づかないことなんてあるのか?もうエレベーターの扉も開いてるのに・・・俺たちはエレベーターを出て2002の号室の前に向かった。そして初音が指紋認証とか網膜認証とかいろんなロックを解除していった。
「・・・・・・」
「あれ、霧響は驚かないのか?」
「え、何がです?」
「こんな厳重なロックなんて普通ありえないだろ」
「いえいえ、お兄様を住まわせているんだからこのぐらい普通です、なんならあと二工程程追加してもいいぐらいです」
嘘だろ、これ以上何を追加するんだ?
「そーくん!早く入るよ!」
「う、うん・・・」
そしてとうとう家の中に入った。
「・・・なるほど、部屋の数──間取り──日当たりの角度────」
霧響は部屋に入った瞬間に色々な情報を仕入れていった。そしてしばらくして・・・
「いいお部屋ですね、お兄様が済むに相応しい」
「そ、そう───」
「ですが、お風呂はもう少し狭くてもいいかもしれません、あれではお兄様と密着しようにも避けられてしまいそうです」
「・・・は?な、何言って──」
「そうなんだよねー・・・そこだけは私も頭を抱えてたんだけど工事なんかのせいでそーくんとの大切な時間に変な雑音を入れてほしくないし・・・」
「それもそうですね・・・」
「・・・・・・」
こうも周りがおかしい人しかいなかったら自分がおかしくなってしまったのかと勘違いしてしまいそうになるけど俺はおかしくないはずだ。・・・多分。まともな第三者がこの場にほしい・・・っていうかこれは`類は友を呼ぶ`的なやつなのか?だとしたら・・・いやいやいや、変な考えに流されるな!正常心を保て!
「はあ・・・」
精神を安定させるのだけで精一杯だ。
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