第218話ゴールデンのウィークの終わり

 とうとうゴールデンウィーク最終日がやってきた。今日でこの家ともお別れだ。そして・・・


「なんなんだ霧響!その荷物の量は!旅行じゃないんだぞ!」


 なんか旅行の時に持っていく大きなスーツケースみたいなやつを持っている。


「何を言っているのですか?一ヶ月間そちらに行くのですからこのぐらいは当然でしょう?」


「い、一ヶ月ずっと!?え、数日じゃないのか!?」


「何を今更そんなことに驚いているのですか?」


 嘘だろ、ちょっとの間だけだと思ってたのにまさあ5月中ずっととは・・・


「で、初音は初音で何してるんだ・・・」


 俺がこの家で使っていた布団を布団収納袋みたいなやつに入れている。


「あっちの家のそーくんの布団を回収するわけにはいかないけどこっちの家にはもう当分来ないんだし布団取っちゃってもいいでしょ?」


「別にいいけどなんのために・・・」


「淑女の嗜み」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


 俺たちは荷物をまとめてとうとう俺たちの家に帰ることにした。・・・タクシーで。


「そーくん大丈夫?」


「だ、大丈夫・・・」


「お兄様!もし催してきたら遠慮なく出してくださいね!採取します!」


「余計にプレッシャーになるからやめてくれ・・・」


 なんでこんなに心配されてるのかというと俺は乗り物酔いが激しいからだ。とは言っても電車なら大丈夫だ。バスもかろうじて大丈夫だ。だけど普通の車はやばい。こんな狭い空間で車のなんというか・・・もあっとした感じの空気がダイレクトに来て、換気をしようと窓を開けたら乗っている車や他の周りの車の排気ガスが入ってきて本当に地獄だ。でもこれは車酔いする人にしかわからない感覚らしい。だから俺はもちろん両手にはエチケット袋を持っていて口の前に携えている。


「そうだよ、そーくんっ!我慢しなくていいからね!むしろ出して!」


 おまけにこんな二人に囲まれていたら余計に戻したくないっていう気持ちがきてプレッシャーになる。勘弁してほしい・・・


「あのー、車出しても大丈夫でしょうかー?」


 タクシーの運転手が尋ねる。


「はい」


「はい」


「では・・・」


 予めネットでタクシー予約をしていたらしく、目的地なども事前に設定済みらしい。そしてしばらくして・・・


`ガタン`


「うっ・・・」


 あ、危なかった。信号が赤の時に一瞬止まって後ろにガクンってなるあれだ。


「ちょっと運転手さん!しっかりと運転してください!お兄様が苦しそうです!」


「止まるときはブレーキのところを何回か連続で踏んだら衝撃が少なくなるってことも知らないの?」


「も、申し訳ありませんー・・・」


 運転手の人に頭が上がらないな・・・クレーマーみたいになってる。けどまあ確かに衝撃は無くしてほしいって言うのは事実だけど言い方って言うものが──ダメだ、今は他のことを考える余裕はない。降りる時に頭を下げて謝ろう。


「そ、そういえば何分ぐらいかかるんですか?」


「ゴールデンウィークの渋滞していることなども考えてー、大体20分ぐらいですかねー」


「20分・・・」


 20分ならなんとか持つな、大丈夫だ、大丈夫。


ー初音Partー


「・・・・・・」


 どうしよう・・・写真撮りたい。そーくんのこんな苦しそうな顔滅多に見られないよ・・・そうだ、そういえばこの前フォトサイレントプログラム入れたんだった。私はスマホを手に取りこっそりそーくんのことを撮った。


「・・・・・・」


 当然音はならずにそーくんの苦しそうな顔を撮ることができた。ああ、いっそのこと出してくれたら最高なんだけど、これ以上苦しそうになったらそーくんが可哀想だし・・・仕方ないよね。私はそれから特に何もすることなくそーくんの背中をさすったりしてできるだけそーくんを楽にしてあげた。

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