第215話初音は聞いていた
「────以上!これがお兄様が王たる所以です!ノートにまとめておいたのでこれを一日10回は確認してください!」
「あ、ああ・・・わ、わかった・・・」
俺は霧響に`お兄様王理論`と表紙に書いているノートを手に取り、自分の部屋に戻った。
「はあー・・・」
本当に疲れた、学校で一限中ずっと先生が数式の説明をしている時よりも疲れた。なんなんだ、あの圧力は・・・
「・・・ん?」
俺が自分の部屋に戻ろうとすると俺の部屋の前には初音がいた。
「ど、どうしたんだ?初音」
「働きたいってどういうこと?」
「えっ・・・」
ま、まさかさっきの話を聞かれてたのか?
「ようやくそーくんの指紋とかいろんなものがついた服を保管できてそーくんの部屋に行こうと思ったら霧響ちゃんの部屋からそーくんと霧響ちゃんの声が聞こえてきて、ちょっと聞いてみたらそーくんが`初音に隠れて働きたい`みたいなこと言ってたよね?」
ああ、これは多分全部聞かれてるコースだー終わったー。
「そ、それは、その・・・や、やっぱり俺も初音一人に全部任せるわけにはいかないからちょっとでも助けになればと────」
「だからそんな必要ないって!大体働くってことは時間奪われるってことでしかもその時間で稼げるのはちょっとだけなんだよ!?私からしたらそんなお金よりそーくんといる時間の方が大事なのっ!何度言えばわかるの!?」
こ、これはまずい・・・ただでさえさっきの霧響の話を聞いて精神がすり減りそうなのにここで初音の説教まで受けたら俺はもう精神的にやばいかもしれない。
「じ、自分で稼ぐことも大事──」
「さっき霧響ちゃんも言ってたけど適材適所があるのっ!」
なんで俺を働かせないために俺たちは言い争ってるんだ・・・普通は働かないから喧嘩したりすると思うんだけど、俺は働こうとするから言い争いになるのか・・・強制的に働かせられるのは嫌だけど働けないっていうのも十分嫌だな。
「適材適所と言われても・・・」
「だから、そーくんはなにもしなくていいの!」
「いや、でもそこは男として────」
「だからそういう面倒なのがいらないんだって、何度言ったらわかってくれるの?」
なんで働きたいって言っただけでこんなに怒られないといけないんだ。そうだ、働く権利は誰にだってあるはずだ!それを言うんだ!
「働く権利は誰にだってあるはずだ、初音の許可なんていらな──」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
`ギロッ`
「──いなんて訳ないよな、恋人なんだしちゃんと話し合わないとダメだよな、うん」
「・・・そうだね」
久しぶりに初音の怖さを思い出したな。最近は初音の怒りとか畏怖は結愛とか霧響に向けられてたからあれだったけど今のは完全に俺に向けられてたな・・・ちょっと怖い感じを向けられただけで・・・情けない。
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