第214話霧響にヒモ防止相談

「んー・・・」


 俺もそろそろバイトとかしてみた方が良いんじゃないかとちょっと焦燥感に迫られている。とはいえそんなことを初音に相談したところで「そーくんはなにもしなくていい」なんていうダメ人間製造機みたいなことしか言わないだろうし・・・


「霧響に相談してみるか」


 俺はそう思い霧響の部屋をノックした。


「霧響ー、ちょっと相談が───」


 俺がドア越しに霧響に呼びかけた瞬間に霧響のドアが勢いよく開いた。


「はい!なんですか!?」


「は、早いな・・・」


「はい、お兄様のことを1秒たりとも待たせるわけにはいきませんから!」


 俺の1秒は今の所そんなに貴重になる予定はない。


「是非入ってください!」


「あ、ああ・・・」


 普段あんまり霧響の部屋に入らないからなんか変に緊張するな。


「そこに腰掛けてください」


 俺は霧響に指定された座椅子みたいなやつがあったのでそこに座り、霧響も対にある座椅子に座った。


「で、相談とはなんですか?」


「ああ、妹として接しないって決めたばっかで申し訳ないんだけど、早速ちょっと俺の妹として───」


「嫌です」


「ええ・・・」


「妹としては接してほしくありません」


 なんでそこまで妹として接してほしくないのかがよくわからないな・・・


「じゃあ妹としてじゃなくても良いから聞いてくれ」


「はい!」


 俺は早速本題に入ることにした。


「俺家事とかその他もろもろの細かいことも全部初音にやってもらってるからそろそろ自分でも何かしないとと思うんだ」


「はい・・・?」


「だから、バイトを始めようと思うんだけど、ちょっと前に初音に言ったら初音に拒否されたからどうにかして初音から隠れてバイトする方法────」


「ダメですよ!」


「ええ・・・」


 なんで霧響まで反対するんだ・・・?ああ、そういうことか。


「霧響、俺の高校はバイトしても良いんだ」


 多分霧響は俺の高校がバイト禁止だと勘違いしてるんだろうと思い、俺はそう言ったんだけど、どうやらそれはあんまり関係なかったらしく・・・


「そういう問題ではなくて!お兄様がどこの下衆かもわからない人間の下で働き、どこの愚民かもわからない人たちと一緒に働くなんてそんなことさせられるわけないじゃないですか!」


「・・・?げ、下衆、愚民・・・?」


 早口すぎてなにを言っているのかわからなかったけど今の話でどう繋がれば下衆とか愚民とかっていう言葉が出るんだ?っていうか愚民って今時使える言葉なのか・・・


「とにかくっ!お兄様が働くなんて反対です!白雪さんは当たり前のことを言っているだけです!」


「で、でも働かないと将来生きていけないし────」


「そんなの私がお金を稼ぎます!」


「それは俺にヒモになれってことなのか!?」


 確かにこのまま行けば俺はヒモコースだけど俺は絶対にヒモにだけはならないって決めてるんだ!


「ヒモではなく適材適所です!お兄様の理論で言えば歴代の王様達はヒモということになってしまいますが、そうではありません!王は王の務めがあるのです!」


「俺は王じゃない」


「私からしたら王以上の存在ですっ!」


 霧響は俺と霧響の間にあるテーブルを`バンッ`と大きく叩いた。だめだ、相談相手を間違えた。まさか霧響まで俺が働くことに反対してくるとは思わなかったな・・・まあとりあえず早く会話を終わらせて一人で考えるしかないか・・・


「・・・わかった、じゃあ──」


「待ってくださいっ!お兄様のその言い方はとりあえず会話を早く終わらせたい時の言い方です!」


 す、鋭すぎる・・・


「これからお兄様自身の価値をしっかりと理解してもらいます!」


「ええ・・・」


 そしてその後俺は霧響に俺自身の価値なんていうものを散々教わった。・・・いや、教わるというより洗脳に近いかもしれない・・・

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