第190話初音の詮索

 だが今のところ霧響が嫌がりそうなことなんてわからないな。何をしても「へえ、そうですか」みたいな感じで流してきそうだし・・・いっそ褒めちぎってみるか。人間誰しも褒められたら照れたりするものだ。そこを突いてみよう。


「霧響の下着姿って絶対可愛いんだろうなあ」


「そう言ってもらえると嬉しいです」


「・・・隅から隅まで見たいなあ」


「是非お願いします」


「・・・・・・」


 だめだ、周りの目が痛すぎて俺の方が先にやられてしまいそうになる。


「じょ、冗談だよ、はは」


「いえ、今の言葉を僭越ながら録音させていただいたのでもう遅いです」


「はああああ!?」


 からかってやるつもりがなんで俺が揶揄われる材料を提供してやらないといけないんだ。


「クスッ・・・」


 霧響はにたっと笑った。か、完全に遊ばれてた・・・!?


`プルルルルプルルルル`


「ん?」


 俺のスマホから着信音だ。誰──っ!?


「初音!?」


 なんでいきなり初音から電話なんてかかってくるんだ?今初音は家にいるはずだ。尾行も警戒したが特にそんな気配もなかった。


「悪い、ちょっと店外に・・・」


 と、霧響に断りを入れようとした瞬間に霧響が俺の右手首を掴んだ。


「だめですよ、そのまま逃げるかもしれないじゃないですか、電話ならここでしてください」


「・・・わかった」


 そして俺は手首を霧響に掴まれたまま初音と電話することになった。


「はい・・・」


『そーくん、今どこ?』


「えっ、な、なんでいきなり?」


『私がそーくんの場所を聞くのに理由なんているの?』


「え、えーっと・・・ちょっと霧響とお出かけに──」


 俺が初音に事情を説明しようとしたらいきなり霧響が奇行を犯した。


「あっ・・・❤︎」


 と、俺は何もしてないのに霧響がいきなり艶っぽい声を出した。俺はスマホを離して霧響に注意する。


「おい、変な声出すなっ!」


「なんの話ですか?」


 こいつ・・・まあいいか。適当に無視しておこう。


「悪い、でさっきの話なんだけど──」


『今の声何?』


「こ、声・・・?」


 変だな、どう考えても聞こえないところまでスマホを離したはずなんだけど・・・


「空耳じゃないのか?」


『へえ、誤魔化すんだ、何か隠したいことでもあるの?』


「いや、別に何も・・・?」


『ふーん、まあいいや、で、今どこなの?』


 さあ、この質問にどう答えたものか。ただ単にデパートに来ていたと答えるのは簡単だけどもし仮に初音に霧響と下着店に来ていたなんてバレたら吊るされるだろうし・・・まあ、バレるわけないか。


「ちょっと霧響とデパートに・・・」


『なんで私とじゃなくて霧響ちゃんとなの?留守番なら霧響ちゃんでもよかったよね?』


「えーっとだな・・・」


 やばい、修羅場の予感がする。

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