第191話初音はいた

 落ち着け、今はとりあえず初音じゃなくて霧響と出かけないといけなかった理由を作らないといけない、そうだな・・・そうだ!特権があるだろ!


「きょ、兄弟でちょっと──」


『またそれ?そろそろパターンが見えてきたよ?』


「いや、でも本当に兄弟で────」


「あっ、お兄様っ、そこはっ❤︎」


 終わった、今のは完全にスマホに音が入った・・・


『何?今の声』


 どうする、ここで正直に言えばまだ許してくれるか?「実は霧響と一緒に霧響の下着を買いに来てるんだ」って!?言えるわけないだろそんなこと!相手が初音じゃなくても言いたくないし初音なら尚更だめだ。


「お母さんの妹のお兄さんの弟のお母さんのおじいちゃんの孫の妹さんが経営しているマッサージ店に来てて──」


『そーくんの血縁者なんてかなり前に調べたけどマッサージ店なんて経営してる人いなかったよ?』


「・・・・・・」


『今正直言ったら許してあげるから、言って』


 言うならここだ。最悪これなら許してくれるって言ったから正直に言ったってことで押せばいけるはずだ。


「実は今霧響と──」


『なんて言うと思った?そーくんの位置を私が知らないわけないじゃん』


「えっ・・・」


『っていうか今真後ろにいるのに気づかないの?』


「・・・・・・」


 た、確かに言われてみれば後ろから殺気のようなものを感じる気が──いやいや、ないないないない。一応ちょこちょこ後ろは確認してたしついてきている可能性なんてなかったはずだ。そうだ、これはきっと俺を試すためのブラフだ。


「俺には隠す気なんてないからそんな嘘には──」


`ビタッ`


「ひっ・・・」


 俺の右肩に人間の左手が置かれた。俺は反射的に後ろを振り返った。するとそこには電話の宣言通りに──


「は、初音!?」


 初音がいた。っていうかいつの間にか霧響が俺の手首を離している。初音の殺気で自分まで巻き込まれると思って咄嗟に離したのか。


「そーくん、事情説明なんて生やさしいものじゃ済まないよ?」


「いや、話し合いの余地がなきにしもあらずと言うか──」


「ない」


 そして初音はやや強引に俺を下着店から引っ張り出してちょっと人気がなさそうな休憩ベンチみたいなところに俺を座らせた。


「えーっと、ちょっと事情説明をさせて欲しいんだけど──」


「私に黙って霧響ちゃんと出かけてた挙句私には嘘をついて私を家に留まらせようとした、どんな理由があれそれは事実だよね?」


「た、確かにそうなんだけど──」


「なら話なんてする余地ないよとにかくそーくんの手足を切断して一生──」


「まっ、待ってくれ、って言うか相手は妹だぞ!?浮気なんかできるわけないだろ!」


「じゃあなんで私に黙って出かけたの?」


「そっ、それは・・・」


 もうだめだ、言うしかない。って言うかもうバレてるんだろうけど・・・

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