第185話初音はキスをしてほしい

 よしっ!謝りムードになってきた。これでそーくんの思考だと浮気しないという意を示すためにキスとかしてきてくれる可能性が高い!そうじゃなくてもハグくらいはしてくれるかもしれない。

 するとそーくんは私に近づいてきた。やっぱりこのムードはキスの流れっ!


「ごめん初音・・・」


 と言いながらそーくんはキスなんかじゃなくて土下座してきた。


「・・・は?」


「土下座で許されることとは思ってないけど、それでもやっぱり謝罪の気持ちを表現するにはこれしかないんだ・・・」


 ・・・え?謝罪の気持ち?そーくん話聞いてなかったのかな?謝罪じゃなくて浮気なんてしない証が欲しいっていう意味だったんだけど・・・え、まさかキスとかそういう感じじゃなくて土下座で浮気したことを許されると思ってるのかな?


「・・・・・・」


「・・・は、初音?」


 いつもならここでヒステリック起こしちゃうけど今回は絶対にそーくんからキスをさせる。


「そうじゃなくて、そーくん・・・もっと、何かないの?」


「な、何か?な、何かって言われても・・・」


 あー!もうっ!鈍感!!こんな鈍感な人この世にそーくんしかいないんじゃないのっ!?あーあーあー!!


「だから、浮気しないって証明付ける、っていうか、ね?」


「証明・・・付ける?」


「体で示すっていうか、なんていうか・・・ね?」


「は、はあ・・・?」


 だめだ、絶対そーくんには伝わってない。どうしよう、でも直接言うのはなんか違うし・・・あくまでもそーくんに自分からしてほしいし・・・


「そーくん、唇たす唇は?」


「は、は?唇たす、唇・・・?」


 さすがにこれでどんなに鈍感なそーくんでも気づいてくれるはず。


「よ、妖怪・・・?唇おばけ的な・・・?」


「っ!!」


 いっそのこと私から嫌がるそーくんに無理やりキスをしてみたい気分でもあるけどそーくんが浮気に関して自分も悪いなんて認める状況なかなか来ないだろうし、いっそのこと答え言っちゃおうかな。


「キス」


「・・・え?」


「そーくんから私にキスして、奪うように、強引に!」


「な、なんだよそれ──」


「キスなら浮気疑惑も晴れるし体で示せるでしょ?それができないなら浮気確定だよ?」


「うっ・・・」


 そーくんは土下座の状態で頭を抱え込んだ。でもそーくんならすぐに──


「わ、わかった・・・」


 って言ってくるよね♪


「っていうか逆になんでそんなに悩んでたの?別にファーストキスじゃないのに」


「俺からしたことはそんなになかったし・・・」


「そんなに・・・?」


「・・・なかったし・・・」


 うん、それが正解、そーくんからキスを実際に迫られたことなんてないよ。


「じゃあ、ね?」


「あ、ああ・・・」


 そしてとうとう私とそーくんの唇が重なり合おうとしていた。

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