第186話霧響の乱入

「お兄様ー、さっき話そびれたことが──ななな、何してるんですか!?」


 霧響ちゃんがリビングの入り口からひょこっと顔を出していた。さすがそーくんの兄弟、毎度毎度いいタイミングで邪魔してくる・・・


「い、いや、こ、これは謝罪しようとして──」


「謝罪がキスなんておかしいですよ!」


「やっぱりそうだよな!?」


「・・・あ、兄弟同士ならおかしくないかもです」


 霧響ちゃんがことごとく兄弟っていう特権を使おうとして空回ってるのがわかる。いや、そんなことよりも!


「謝罪がキスっていうのはおかしくないよ、謝罪と同時にこれからは浮気しないっていうのを体に刻むためのキスだもん、簡易的な儀式みたいな感じ?」


「ま、まあまあ、どちみち霧響の前でキスなんてしたくないだろ?ま、前に見せびらかすものじゃないっていう結論に行き着いたし・・・」


「・・・わかった」


 私は嫌々ながらも確かにそうだと思って`一応`承諾した。この感じでいくとそーくんはまた誤魔化そうとしてそうだけど私は絶対に忘れない。このゴールデンウィーク中にそーくんからキスしてもらう!


「で、お兄様、浮気しないっていうのを体に刻むなんて白雪さんがいきなり言い出すってことは浮気しかけたんですか?」


「しかけたっていうよりも普通に`した`よね?そーくん?」


「いや、その、まあ、や、止むに止まれぬ事情があって──」


「どんな理由でも関係ありません!浮気は浮気です!」


 霧響ちゃんの言う通り。浮気は浮気、浮気したっていう事実がある限りは何を言っても言い訳にしかならないんだよ・・・私だったら記憶をなくしても転生しても浮気なんて絶対しないのにな・・・


「そういうことだから、そーくん、誤魔化して逃げようなんて思わないでね?」


「も、もちろん・・・」


 そーくんは自分の考えがバレていたのかという表情をしている。そーくんの考えなんて毎分毎秒手に取るようにわかってるのに、なんで今更驚いてるんだろう。


ー総明Partー


「あっ、で、お兄様、さっきお話しそびれたのですが、明日お出かけしませんか?」


「さっき・・・?」


 ああ、さっきの下着姿で俺の部屋に来たやつか。まあ、妹の下着姿なんて特になんとも思わないけど。


「はい、それでお願いがあるのですが、私の下着を──」


「却下だ」


「えっ!?まだ何も言ってないじゃないですかっ!」


「そういうのは前の初音との一件で懲りたんだ・・・」


 なんでまたあんな女性下着物が売っている男からしたら地獄みたいなところに行かないといけないんだ。


「・・・白雪さんとの一件?どういうことですか?」


「いや、なんでもない、とにかく、下着とかは自分で選べ!もう子供じゃないんだ」


「私が結婚を申し出ようとしたら妹として子供扱いするのにこういう時だけはそんなことを言うんですね」


 うっ・・・そこは痛いからやめてくれ。


「つまりそれは私との結婚を認めたということでいいですか?そういうことなら下着は買いに行かなくていいのですぐに婚姻──」


「待て待て、わかった、ついていく、ついていくから・・・」


「なんでそんなに嫌そうなんですか?私としては別に来てもらわなくても──


 冗談じゃない、行かなかったら婚姻届なんて認められるか!


「ついて行かせてください・・・」


「えー、そんなに私の下着が見たいんですか?もうっ、仕方ないですね❤︎」


「・・・・・・」


 危ない、危うく妹に殺意を覚えるところだった・・・

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