第181話初音と結愛の物理戦
「ねえ、いっそ死んでみる?」
「あなたこそ・・・」
そして私とあいつはこの薄暗い路地裏で同時に武器を出した。私は包丁を、あいつはどこから出したのか薙刀のように長い得物を・・・
「いっつもいっつも邪魔ばっかり・・・!」
と、薙刀を私の方に向けて振りかざしてきた。
「邪魔は・・・そっちでしょ!」
私は包丁をこの名前も呼びたくもないようなやつに投げつけた。が、それを薙刀で弾かれた。
「武器を自分から手放すなんて・・・知能指数低っ、まあ虫だから・・・」
「何勘違いしてるの?」
私は携帯している包丁を取り出した。ついでに言うとあと百本はストックがある。
「はあ・・・そんな簡単にはいかないか・・・でもリーチの短い包丁で薙刀に勝てると思ってるの?大人しく死んでくれない?」
「そっちこそ何言ってるの?」
そう言いながら私は三本の包丁をあいつに向かって投げた。
「投げれるんだからリーチなんて関係ないに決まってるでしょ?」
「っ・・・!」
その包丁をこいつは生意気にも全部薙刀で弾いた。
「じゃあ、その包丁がなくなるか、それとも私が包丁が刺さるまでの勝負ってこと?」
「そういうこと」
そしてそれから約90回ほどそのやりとりを繰り返した結果・・・勝負がついた。
`ガャン`
金属が地面に落ちる音。それは私の投げた包丁じゃなく、薙刀が地面に落ちる音だった。
「そんなっ・・・!」
薙刀をずっと持つには握力がいる、それに加えて包丁に神経を使っているんだったらそうなって当たり前のこと。つまり・・・
「最初から決まってたの、じゃあ殺すから」
私は宣言通り目の前の膝をついているこいつに対して包丁を突き刺そうとした、が、その瞬間・・・
「おーい、さすがにちょっと遅すぎ──何してるんだ!?」
「そーくんっ!?」
なんとそこにはそーくんがいた。そしてそーくんが顔を出したかと思うとあいつは表情を変えて涙目になりながらそーくんのところにすり寄った。
「結、結愛!?だ、大丈夫か!?」
「うん・・・いきなりあの人に襲われて・・・」
「本当なのか!?」
「私がそーちゃんに嘘なんてつくわけないじゃん!」
「うーん・・・」
明らかに困惑している様子のそーくんに私は問いただす。
「ねえ、私のこと誰かわかる?」
「えーっと・・・電話の人?」
どうやら今のそーくんにとって、私は電話の人らしい。でもそれもこれまでのこと。あとでそーくんのことをたくさん躾けよう。
「そーくん・・・ごめんっ!」
私はそーくんの元までダッシュして`記憶抹消解薬`の入った注射器をそーくんの腕に刺した。
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