第182話結愛は純愛者?

「いっ・・・!」


 `初音`は何故かいきなり俺に注射器を刺している。


「い、いきなり何を────」


「よかったよー!そーくんっ!」


 と、初音は俺に抱きついてきた。・・・いや、どういう状況なんだ?っていうかここは誰で私は──俺は俺だけど。ちょっと言ってみたかっただけだけどここは本当にどこなんだ?何でこんな薄暗い路地裏にいるんだ?で、何で初音は何で俺に抱きついてきてるんだ?


「えっ、え?いきなり何を──っていうかここどこだ?」


「あっ、ここは──」


 初音が俺の質問に答えてくれようとした瞬間に俺の口が結愛の手で塞がれてもう片方の手で俺の首元にハサミのようなもの向けられている。ちなみに背中は密着させられているため結愛の胸の感触も──


「そーくん、殺すよ?」


「ふふふ、ふふん」


 俺は口を手で塞がれているためちゃんとは言えなかったけど一応ごめんなさいと言ったつもりだ。発音の仕方とかで通じたはずだ。


「ごめんなさいって何?もしかして認めたの?それってつまりは──」


「ねえ、何勝手に会話してるの?この状況わかってる?まあ、虫には意味ないんだけど、そーちゃんの記憶が戻っちゃった以上、そーちゃんに質問することがあるんだー、その返答次第では・・・まあ、ね」


 結愛は意味深に言った。そんなこと言われてもなあ・・・俺は今目が覚めたら何故か無人島にいたなんていうレベルで困惑してるんだ、そんな状況でそんな命の危機になるようなことを迫られても困る。


「ねえねえ、そんなことよりさっきのって認めたってことでいいの?」


 初音はそんな状況など一切気にせずぐいぐいしてくる。俺の命の危機をそんなことで済まさないでほしい。


「そんなことって・・・俺の命の危機──」


「命の危機?何言ってるの?そいつにそーくんのこと殺したりなんてできないって」


「えっ・・・」


「・・・・・・」


「そーくんを物理的に失うなんて度胸そいつにはないって、まあ私ならできるけど」


「・・・・・・」


「そ、そう、なのか?」


 初音はなんか意気揚々と言ってるけど正直ちょっと安心したな。結愛がそこまでの異常者じゃなくて・・・それに比べてなにが私ならできるけど、だ、そんな自信満々にいうことじゃないだろ・・・

 すると結愛はいきなり膝から崩れ落ちた。そして──


「そーちゃんを殺すなんてできるわけないよー・・・」


 結愛はしくしくと泣き始めた。やっぱり結愛はちょっとやりすぎだけどそれでも一線を超えることはない女の子だったんだ。


「まあ、それは普通の──」


 俺が結愛をフォローしようとした瞬間、初音が爆弾発言を落とす。


「殺す覚悟もないなんて・・・ふっ」


 と、ドヤ顔で俺の手を引っ張ってきた。


「・・・・・・」


 結愛、本当にごめん。あとで初音にバレないようにしっかりとメールで謝ろう。

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