第174話徐々に戻る記憶

「・・・チャーハン?」


「そうだよっ!昔から好きだったでしょ?」


「チャーハン・・・」


 チャーハン、何か思い出せそうな気がする。チャーハン、昔、好き、結愛・・・あっ!


「思い出した・・・」


「えっ・・・?」


「思い出したぞ!結愛!」


「・・・何を思い出したの?」


「ああ、小学生の時のことを思い出した!」


 そうだ、結愛とは幼馴染だったんだ、なんで俺はそんなことまで忘れてしまってたんだ。でも中学生の時と高校生になってからの記憶がない。そこからいい感じになってそのまま恋人になったってことなのか?確かにそう考えると不自然じゃないな。


「小学生の時のこと・・・だけ?じゃああの虫のこととかは覚えてないの?」


「ああ、残念ながら虫のことは思い出せないな、まあその内──」


「いいよ!思いださなくて!今覚えてるのは私だけってことでしょ?」


「お、おい、結愛?」


「あんな虫のことも覚えてなくてそーちゃんが覚えてるのは私のことだけ・・・」


 と、結愛は小さい声でつぶやいた。そんなに虫のことを思い出して欲しくないのか・・・まあ俺もできることなら虫は苦手だからそんなことなんて思い出したくない。


「あっ、そう言えば俺には妹がいたはずだ」


「あー、そっちも思い出しちゃったんだ・・・まあそーちゃんなら心配ないか」


「心配って?」


「そーちゃんって妹に欲情したりする?」


「は!?何言ってるんだ、するわけないだろ!」


「なら安心だね♪」


 本当にいきなり何を言ってるんだ俺が霧響に欲情なんてするわけないだろ。でも霧響は今どうしてるんだろうな────


「私以外のことは何も考えないでいいから──私以外のこと考えてる暇があったら早くご飯食べてよ」


「え?あ、ああ、悪い」


 なんだ今の不自然な接続詞っていうかなんていうか・・・まあいいか。そんなことよりなんで俺が結愛に無意識のうちに恐怖してるか思い出したぞ!むしろなんであんな悍ましいことを忘れてしまっていたんだ。結愛以外の女の子と喋ったらセミの真下で瞑想させられたり、手にちょっと当たったりしたらそれはもう本当にサンドバッグっていうぐらいビンタされてたのに・・・記憶抹消剤のせいで記憶が消えてたのか?それともその前から消えてたのか?


「・・・・・・」


 今となっては知る由もない。俺は結愛に促されるままにチャーハンを口に含めた。


「美味しい!」


「ほんとっ!?ありがとっ!」


 やっぱりチャーハンは美味しいな。麺類とかも捨てがたいけどやっぱりチャーハンも美味しい。


「・・・ん?これ何か隠し味でも入ってるのか?」


「うん、愛の、ね❤︎」


 愛の隠し味・・・鉄みたいな味だ。まさか鉄でも擦って入れたんじゃないだろうな。

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