第166話霧響の作戦

「こ、行動で?」


 なんだ?いきなり普通の霧響に戻ったぞ?どうなってるんだ?


「はい、今の謝罪の気持ちを行動で示してください」


「ま、待て──」


「なんですか?もしかして今の謝罪は出まかせの謝罪だったんですか?謝罪で嘘をつくなんて最低の行いですよ!」


「・・・・・・」


 も、もしかして、これは・・・はめられた!?俺が適当に謝ることを予見してわざとあんな態度を取っていざ俺が謝罪したら行動で示せと言って俺が否定したら情に訴えかけてくなんて・・・全部演技か。


「土下座すればいいのか?」


「そんなのいらないですよ」


「じゃあ何をすればいいんだ?」


「印鑑とか持ってますか?」


「印鑑?ああ、中学校を卒業した時にもらったやつなら・・・」


「じゃあ、それをください」


「そんなことでいいのか?」


「はい」


 と、霧響はにっこりと笑う。印鑑なんて使って何がしたいんだ?俺先に何かを送りたいとか?いや、それなら普通に手渡しすればいいだけだし・・・わからないな。俺はとりあえずそんなことで済むならと印鑑を霧響に渡そうとした、が、ここでようやく今まで黙っていた初音が口を開いた。


「待って、そーくん」


「ん?」


「印鑑なんて渡したらダメだよ、結婚届けに印鑑押されたりでもしたらどうするの?私と結婚できなくなるよ?」


「あっ・・・」


 そうだった、危ない危ない。今までほとんど印鑑なんて使ったことないから頭が回らなかったけど、確かに普通に結婚届とかを偽造されたりしたらアウトだな。・・・ん?


「いや、でも俺と霧響は兄弟なんだし別に心配いらないんじゃ────」


「兄弟でも結婚できる国はあるよ?有名なところで言うと、スウェーデンとか?あとはできたばかりの国でまだ法律とかが浅い国なら全然関係ないからそう言うところで婚姻届を出してからまた帰国すれば兄弟でも結婚できたりするんだよ?」


 そ、そうなのか。それにしても今日は二度も初音に助けられたな。初音がこんなふうに俺のことを助けてくれるなんて、ちょっと意外だな。いや、以外ではないんだけど、今までは怖いイメージしかなかったからなんかこう言う優しい部分も見てみるとやっぱりいいなあとは思う。嫉妬さえなければ・・・!


「そーくんと結婚するのは私なんだから、絶対それだけは奪わせない」


「あー・・・」


 う、うん、や、優しさになる行いだと信じよう・・・


「なんで・・・」


「ん?」


「なんで邪魔するんですか!」


「ごめんね、霧響ちゃん、でもそーくんは私のなの」


 なんでよりにもよって霧響にはこんなに優しいんだ?ゲームセンターのなんの罪もないお姉さんにはあんなに冷たかったのに・・・


「だから!それは────」


「霧響ちゃん・・・まあ、将来的に兄弟になるんだし、喧嘩の一度や二度ぐらい別にいいよね・・・」


 そういうと、初音は三歳児ならショック死で死んでもおかしくないような形相で言う。


「そーくんは私のなの、だからこれ以上わがまま言わないでくれる?」

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