第131バッティングセンターは羞恥場

 まず俺たちが向かったのはバッティングセンターだった。テレビで見たことがあるレベルで実際に来るのは生まれて初めてかもしれない。そして俺たちはお互い横の席を取りバッティングをすることにした。


「えーっと・・・?」


 球の速度を設定できるらしいけどそんなこと言われてもどのぐらいが早いのかなんて分からないし、とりあえず30kmにしてみよう。俺が設定するとどこからともなく球が現れた。


「・・・・・・」


 いや、遅い。こんなの下手したら幼稚園児でも打てるぞ。俺はものすごくスローの球を力強く打った。するとその球はものすごい勢いで左方向に飛んでいった。


「おお・・・」


 案外ストレス発散になるかもしれない。


「初音は・・・?」


 俺が横を見てみると初音は125kmに設定していた。


「・・・は?」


 待て待て、確か野球選手のプロの平均が140前半って聞いたことがある気がするのに125って・・・さすがに女子が打てる速度とは思えない。


「や、やめとけ、初音、それは──」


「毎回毎回浮気ばっかりして!そーくんのバカーーーーーー!!」


 と、大声で言うと初音はその物凄く早い球にバッドを振りかざしホームランと言わんばかりの勢いで球を遠くに追いやった。


「い、いや、だから俺は──」


 と、俺が誤解を解こうとするも、また初音は球が来たと同時に言う。


「いっつも他の女の胸を見てるそーくんなんてーーーーー!!」


 そういうと、またしても球を遠くに吹き飛ばした。・・・っていうか俺は別に胸なんて見ていない!・・・まあ、無意識に見ていたとしたら申し訳ないけど、でも無意識だとしたらそれは意識的じゃないから俺のせいじゃないしそれは性別という壁で俺が男性という性を持って生まれてきたんだからそれは本能的なものだからそれはもう仕方がない。そうだ、なんか科学的にもそういうのは証明されてるって聞いたことがあるような無いようなだからそれは仕方のないことなんだ。


「・・・・・・」


 なんでバッティングセンターでこんなことを考えないといけないんだ!・・・その後も初音は日々の俺へのストレスをぶちまけるように球に向かってストレス発散をした。最初からこれが目的だったのか?確かにいきなり体力作りなんておかしいと思ったけど初音の不満を俺に聞かせ、それを俺に治させるっていう計画なのか?


「だとしたら効果ばつぐんすぎるぞ・・・」


 スポーツをしにきたはずがいつの間にか俺の羞恥を晒すだけのバッティングになっていたなんて・・・地獄すぎる。もう2度と初音のバッティングセンターには来ないぞ。

 俺はそれを胸に家に帰ることにした。

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