第130話初音の不満

 俺たちは学校に登校したが、特に結愛は何も仕掛けてきたりはしなかった。が、それは結愛が俺のことを諦めてくれたから、と考えるよりは嵐の前の静けさ的な考えをするのが妥当だと思う。



「ねね、そーくん」



「ん?」




 と、俺がそんなことを考えていると隣の席から初音が話しかけてきた。




「どうしたんだ?」




「そーくんって、体力ないよね」




「えっ・・・」




 いや、確かにそうかもだけどそんなにド直球で言うことないだろ・・・っていうか確かに俺は体力がないかもしれないけどただただ初音が化け物っていう線も否定できない。




「そこで、今日はスポーツデートにしようと思うんだけど、どう?」




「・・・スポーツデート?」




 それはデートって言えるのか?俺は運動が好きでもなければ得意でもないからどちみち地獄絵図しか想像できない。よし、ここは断ろう。




「悪い、俺運動は──」




「何?私とできる限り長くデートして遊べるための体力作り、つまりはスポーツデートなわけだけどそれを否定するってことは私と長い時間デートなんてしたくないって言ってるのと同じっていうのを踏まえたうえで発言してね?」




「・・・た、楽しみだなあ」




「だよね!」




 そんなこと言われたら言いたいことも言えるわけないだろ・・・そして俺だけがちょっと気苦しい空気のまま放課後を迎えることとなった。相変わらず結愛は特に何も仕掛けてこないからとりあえずは一安心と言えるかもしれない。




「じゃあ、そーくん、行こっか♪」




「あ、ああ・・・」




 そして俺はいやいやスポーツをしに行くことになった、が、その前に女神先生が俺たちの足を止めた。




「あっ、待って、最王子君も白雪さんも、まだ4月なのにもう3回も休んでるから今日は寄り道せずに家に帰った方が良いと思うよ?」




 おお!流石先生だ!これでもしかしたら今日スポーツデートなんてしなくてよくなるかもしれない。女神と呼びたいぐらいだ・・・




「いえ、ご心配には及びませんのでお構いなく・・・!」




 と、初音が語尾に圧をかける。せ、先生、信じてますよ、先生はこの程度の圧じゃ──




「そう?じゃあいっかー」




 えええええええええええ!!なんk圧にやられたとかじゃなくて普通にOKしてる!?もしかして天然なのか!?こんな時に・・・




「そーくん、早く行こ♪」




「あ、あー、はいはい、わかったわかった」




「なんでそんなにダルそうなの?嫌なら嫌で私は良いんだけど?」




 それで俺がもし本当に嫌って言ったら俺が初音と長い時間一緒に居たくないってことになるんならそんなこと言えるわけないだろ!




「楽しみすぎて武者震いしただけだって、はは・・・」




「なーんだ、そういうことね!ならなおさら早く行こ♪」




「あ、ああ・・・」




 そして俺たちはスポーツデートという何気にかなりパワーワードなデートをすることになった。

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