第110話初音のクレーム

 なんか恐縮しきった女店員さんが初音と一緒に俺のもとにやって来た。




「なんで女店員しかいないの?」




「いえ、そう言われましても・・・」




「私からそーくんを奪うためなの?ねえ、そうなんでしょ?」




 ・・・どういう状況なんだ?




「初音、なんで店員さんを連れてきたんだ?」




「ああ、うん、ほら、さっきのアームが弱すぎた件についてちょっと抗議しようと思って」




「いやいやいやっ!そんなことしなくていいって!」




 別にそういうのもゲームセンターの楽しみ方の1つだから俺は全然気にしてないしそれがゲームセンターさんの稼ぎ所の1つだと思うし。




「でもあれは間違いなくアームの角度とかも完璧だったし強度さへあれば間違いなくこの朝デートはいい思い出になったかもしれないのに、なあ・・・」




 と、なあの所を強調して初音は女店員さんに目配せをした。




「も、申し訳ございません、でも私に言われても──」




「ねえ、その胸何なの?」




「「・・・は?」」




 俺と女店員さんの声がハモってしまった。




「何そーくんと同じ言葉を発してるの?」




「も、申し訳ございません・・・」




「・・・・・・」




 理不尽にもほどがあるけど俺がここで何か言うと「何?私はそーくんのために言ってるんだけど、むしろ感謝してほしいんだけど?」とかって言われそうだから女店員さんには悪いけど俺は特に何も言うことができない。




「まあそのことはもういいや、で、その胸何なの?」




「む、胸・・・?」




「なんでそんな男を惹きつけそうな胸を見せつけてるの?」




「い、いえ、別に見せつけてない──」




「なら今すぐこの場で切り落とせる?その贅肉」




「き、切り──!?」




 このまま続くと危なそうなので俺は女店員さんに深く頭を下げてとりあえずゲームセンターを後にした。




「初音!何やって──」




「そーくんこそ何やってるの?確かにあんな女に気を取られた私も冷静じゃなかったのは認めるけどなんであんな女に頭下げてるの?」




「いや、だって一応迷惑──」




「迷惑って何?もしかして私がしたことが迷惑なの?不良品があったら教えてあげるのが相手にとっても利益だし客にとっても利益でしょ?」




「そ、それはまあ・・・」




「・・・やっぱろ帰ろっか、そーくん」




「えっ、で、でも結愛──」




「なんで他の女の名前出してるの?」




「あっ、い、いや・・・」




「・・・帰ってくれるよね?」




「・・・ああ」




 そして俺は初音と一緒に家に帰った。・・・いや、雰囲気的には帰らされた、という風な表現が正しいかもしれない。

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