第109話朝デート

 今は朝の7時30分、だがなんと俺たちはもう通学路にいる。




「ねえ、だいぶ早く出てきちゃったから朝デートしない?」




「朝デート・・・?」




 いくら早く家から出てきたからとはいえ登校までの所要時間があと50分ぐらいしかない。50分でできることってなんだ?




「良いけど、どこに行くんだ?」




「んー、ゲームセンター?」




「ゲームセンター・・・?」




 ゲームセンターで50分・・・学校までの道のりを考えると40分か。確かにちょうどいいぐらいあもしれない。




「よし、わかった、行こう」




 そして俺は初音と最寄りのゲームセンターに向かった。この付近は意外と何でもあるので住むのに困ることはない。




「おお・・・」




 何気にこっちに引っ越してきてから初めてのゲームセンターだ。俺の想像より3倍は大きい。




「じゃあ入ろっ♪」




「ああ」




 そして俺たちはゲームセンターに向かい真っ先に目の前にあったUFOキャッチャーに目を向けた。包丁を持った笑顔のパンダというなんとも不気味なぬいぐるみがいる。




「な、なんだこれ・・・」




 こんなの誰が欲しがるんだ?こんなの欲しがる奴なんて異常者だけだろ。




「わあ、なにこれ、可愛い♥」




「・・・・・・」




 前言撤回。こんなの欲しがる奴なんて優しい人だけに決まってる。そうでないと俺の彼女はやばい人ってことになってしまう。




「そーくんっ!これ取って!」




「えっ、お、俺が・・・?」




「うんっ!」




 うわあ・・・こういう時だけそんな純粋な笑みを向けるのはやめてほしいけど不覚にも可愛い。でもまあ、たまには、っていうかこういうのも良いな。最近は張り詰めた空気が続いてたからこういう時間が愛おしい。




「よしっ!」




 ここでかっこいいところを見せつけよう。そして俺は100円玉を挿入し、UFOキャッチャーのアーム操作を始めた。




「・・・・・・」




 まずはいい感じにアームをそのぬいぐるみの上まで持っていった。そして・・・




「・・・・・・よしっ!」




 アームがぬいぐるみをかなりいい感じに捉えた。




「流石そーくん!」




 そしてアームがぬいぐるみを持ち上げた。が、ここでUFOキャッチャーあるあるが発動してしまう。




「えっ・・・」




「・・・・・・」




 そう、なんとアームが弱すぎてぬいぐるみを持ち上げられなかった。まあ、これもゲームセンターの一つの面白み・・・?なのかもしれない。




「まあ、こういうのもゲームセンターの面白み──」




 俺が隣に‘いるはず‘の初音に喋ろうとしたら隣に初音はいなかった。そしてしばらくして初音が店員を連れてきた。




「ど、どうしたんだ?初音」


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