第103話奪われたそーくん
「・・・・・・」
私はその後もその映像を見続けた。今のところはあいつが‘私の‘そーくんにべたべたしようとしてそーくんがそれを拒んでいるだけだけど、今この家にそーくんがいないところを見る限り、多分そろそろ何かが起きるんだと思う。
『そーちゃん私の家来ない?』
「・・・は?」
何言ってるのこいつ。そーくんも困惑したような表情になっていた。それも当然、今避けようと必死になっている相手に家に来ないかと誘われたんだから・・・
『断る!』
と、当たり前だけどそーくんは断った。欲を言うと困惑なんてせずにすぐに断ってほしかったけどまあ結果的には断ったんだしまあ特に言及はしなくてもいいと思う。
『って言うと思ったからちょっとこの写真見て!』
『なっ・・・』
そういうと、そーくんはそのスマホの画面を見て驚いた。監視カメラを拡大し、そのスマホの画面を見るといかにもそーくんが好きそうな本が本棚に並んでいた。
『そーちゃんこういうの好きなんでしょ?私の家に来たらいっぱいあるよっ!』
・・・やっぱりそういうことか。でもーー
『物なんかでつられるわけないだろ!だいたいーー』
そう、そーくんは物なんかじゃつられない。もしそんな簡単に釣られるなら私だって最初あんなに苦労してないわけだし。
『あー、やっぱりダメかー、じゃあいいや』
『・・・え?』
そう来たか・・・でもそれは私が前に似たようなことをしてるからそーくんには意味が無い。
『ああ、諦めろ』
「か、かっこいい・・・♥」
そしてその後も話が続き、こいつが冗談にもならないこの家に泊っていくなんてことを言い、そーくんは必死にそれを断ろうとしている。
『いや!だからそれも無理だって、初音がーー』
『そーちゃんさっきから‘初音‘初音って言ってるけどそーちゃん自身はどう思ってるの?』
『えっ・・・』
と、そーくんは戸惑った。こ、こいつ、そーくんが苦手そうなところを的確に・・・
『・・・依存?』
『あれー?なんかいきなり元気なくなっちゃったねー、もしかして気づいちゃった?あの虫に寄生されてるのはそーちゃんだけど、それを受け入れてるのもそーちゃんだってことに』
「違う!違うよ!そーくんっ!それは依存じゃなーー」
私が異論を唱えようとするも、これは録画映像なので当然そんなものが届くはずもなく・・・
『だからっ!そんなそーちゃんを助けるために私はずっと言ってるんだよ?』
『俺を・・・助ける?』
違う、こいつは自分のことしか考えてないけど、これはきっとそーくんを自己嫌悪させるために言ってる・・・こんなことを言われたらそーくんならきっとーー
『最低だ・・・』
やっぱりそうなるよね・・・そーくんが最低なわけないのに・・・
『大丈夫、どんな最低なそーちゃんでも‘私が‘受け止めてあげるから』
そしてこいつはそーくんを抱きしめーー
‘パリン‘
私は思わず画面を割った。でもこの先の展開は大体予想できる。きっとそーくんの良心に付け込んで何かを吹き込み、私との仲を引き裂いたに違いない。
「・・・・・・」
私が甘かった。催眠とか洗脳とかそんな甘いこと言ってられない。
「殺さないと」
私は‘行動‘に出ることにした。
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