第96話総明の作戦

 俺と初音はいつも通り二人で学校に登校しようとしていた。二人でさご飯を食べ、2人で家を出て、2人でエレベーターに乗り、エントランスに向かう。ここまではいつも通り、だが。




「おはよー、そーちゃん♥」




 エントランスには結愛が待ち受けていた。だが、俺は同様なんてしない。そう、初音と一緒に生活していたらもうこんなことでは驚かない。




「・・・・・・」




 俺は無視を決め込む。前に初音にこれをやったときは俺の弱みを見せられて脅されたけど結愛は昨日転校してきたばかりでそんな弱みなんて持ってないだろうし、仮に持っていたとしてもそれはおそらく小学生の時の俺の弱みで今の俺にはなんのダメージも無いようなことだろう。だからこそ、無視を決め込める。




「あれー、そーちゃんどうしたの?」




「・・・・・・」




「あっ、もしかして私が迎えに来たからって照れてるの?可愛いー♥」




 と、結愛が言うと俺も内心ではちょっと困惑してたけどどうやら俺よりも初音の方が耐えきれなかったらしい。




「違うって、お前のことが邪魔なの、そーくんの気持ちも理解できないなんて、可愛そうな女・・・」




 ああ、無視ししてたら良かったのに・・・なんでこういうところだけは冷静でいられないんだ。他の所は冷静すぎて逆に怖いぐらいなのに・・・




「え?でもさっきからそーちゃん黙ってるじゃん、嫌なら普通否定するはずだよ?」




「それはお前のことが嫌いだからもう相手をしないようにしてるだけ」




「へー、それが本当だとしても、じゃあ今私にかまってる虫雪さんは頭が弱いの?」




「それを言うなら人間のことを無視としてしか認識できない認識能力を持ってたり、個体名すら覚えられないお前の方が頭が弱いんじゃない?」




 と、さすがに二人の会話がエスカレートしてきたので、俺は‘初音に‘声をかけた。




「初音、昨日言っただろ、早く行くぞ」




「あっ、そ、そうだね、ごめん・・・」




 そうしおらしく言うと、俺と初音は早歩きでエントランスを出た。




「全く、昨日言った通り、ああいうのは無視をすれば大抵どうにかなるはずだから無視をしよう」




「うん・・・ごめん」




 いつもは初音に流されている俺だが今回は違う。なぜならああいう‘やばい奴‘の扱いは初音よりも俺の方が上手だからだ。毎日のように初音の相手をしている俺にとって結愛なんてやばい奴の領域には入らなーーいことも無いけど対処できないことはない。




「そう、結愛が初音よりもやばい奴じゃなかったら・・・」




「ん?何か言った?」




「ああ、いや、なんでもない」




 そんな不吉な言葉を最後に、俺たちは学校に登校した。


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