第94話一件落着

 あ、危なかった・・・もしあそこで総明のことを貶してそんな総明のことなんて好きになるわけない、なんてことを言ったらきっとお姉ちゃんは実の妹だからって容赦なく私のことを手に持っていた包丁で刺し殺していただろう。




「・・・じゃあね」




「うんっ、おやすみ、お姉ちゃん」




「師匠、気を付けて帰ーー」




「何他の女の心配してるの?浮気?浮気なの?」




 と、お姉ちゃんがいつものように怒っている。




「はは・・・」




 私は苦笑いで誤魔化し、そのままエントランスを後にした。お姉ちゃんはだいぶ怒っている様子だったけど総明と一緒にエントランスまでは私のことを送ってくれた。もしかしたらそこは私が妹だから少しだけ優しくしてくれてるのかもしれない。




「と、思いたいけど・・・」




 実際は総明を私と二人きりにするのが嫌だっただけだろうなあ・・・




「はあ・・・」




 私は色々と呆れつつ自分の家に帰ることにした。




ー総明partー




 俺たちは師匠をエントランスまで見送った後二人で自分たちの部屋に戻った。そして俺たち二人が玄関に入り、オートロックがかかった瞬間に初音が質問・・・というよりは尋問という方が表現が正しいような空気で聞いてきた。




「で、なんで私に黙って‘女‘をそーくんの部屋に連れ込んでたの?」




「連れ込んだって、そんな人聞きの悪い言い方・・・それに女って、初音の妹だろ?」




「何?彼女の妹なら彼女に秘密でも連れ込んでいいの?」




「そ、それは・・・」




「それにキスの仕方が分からないなら私に直接聞けばよかったじゃん、なんでそうしてくれなかったの?そこで他の女に相談するなんてちょっと意味わからないよ?そんなの浮気疑われても仕方ないし、実際にキスしようとしてたよね?」




「・・・・・・」




 いや!ここでいつも黙って認めるからダメなんだ、今回は無理やりにでも認めないぞ!




「直接聞けるような空気間じゃなかったし、それに他の女っていうけど初音の妹だし、それだけで浮気を疑うのはーー」




「・・・・・・」




「えっ・・・」




「・・・・・・」




 しまった、初音が今包丁を携えていたのを忘れてた。これは・・・




「っていうのは冗談で、黙って初音に女の子を連れ込んだ俺が悪かった、許してくれ・・・」




「それは本音?」




「も、もちろんだ・・・」




 そういうと、初音は俺の方に近寄って来たかと思うとーー




‘チュッ‘




「・・・っ!?」




 俺の唇に濃厚なキスをしてきた。そしてしばらくして・・・




「キスって言うのはこうやるんだよ♪次からはそーくんからしてね♪」




「あ、ああ・・・」




 そういう形でなんとか今回の一件は解決した。・・・が、そもそもの問題のタネ‘あいつ‘が残っている。何か対策を立てないと・・・それこそ初音に相談してみよう。




「まあ、とりあえず一件落着ってことだな」


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